人間科学概論IIB
情報通信技術と人間

2017年12月05日 14:48
渡辺隆行
https://www.univ-web.org/nabe/lec/HSintroIIB/

目次


授業の概要

「人間科学概論IIB」シラバス

情報通信技術(特にインターネット)と人間の関わりという観点から,人間科学科の学生の出発点となる授業をおこなう.まず,人間とコンピュータを比較するところから両者の相違点と共通点を考える.次に,人間の理解という視点から認知心理学,人間とコンピュータの関わりという観点からヒューマン・コンピュータ・インターラクションとユーザビリティについて解説する.さらに,情報通信機器に取り囲まれている現代社会の人間の営みを背景に,インターネットを支える技術について簡単に解説し,悪意ある攻撃から自分を守るセキュリティと自分のプライバシーを保護する方法について説明する.最後に,この授業と人間科学科で学ぶ諸授業との関連を指摘する.これらの授業を通じて,情報通信技術の活用法と人間を幸せにする技術について考えることがこの授業の目的である.

参考資料

はじめに

情報通信技術と人間の関わり

コンピュータとは何か?

受講生で考えてみる(グループ・ディスカッション)

過去何年かの受講生から出た答えをまとめると,以下の7つの観点からコンピュータを説明できそうです(他の答え方もあると思います).

  1. ハードウェア:IC(集積回路)のような細かな電子部品で構成される.ディスプレイとキーボードがある.電気で動く機械.ハードウェア上でソフトウェアが動いている.様々な形(大型計算機,パソコン,スマホ,組み込み,ロボット,etc)をしている
  2. ソフトウェア/アプリケーション:アプリケーション次第で色々なこと(ワープロ,表計算,ウェブ,メール,ゲーム,動画閲覧など)が出来る汎用性がある.ソフトウェアでプログラミングされたことしかできない.人間はソフトウェアを活用して創造的な作業を行うことができる.2進数で動く.
  3. 優れた情報処理能力:人間より速く正確に大量の情報を処理できる.複雑な計算も出来る.大量のデータを記憶し,いつでも取り出せる.これにより,情報の受発信や共有ができる.
  4. ネットワーク機能やそれがもたらすコミュニケーションツールとしての能力:人間はコンピュータに情報を入力し,コンピュータはそれを処理して人間に出力しているから,人間とコンピュータのコミュニケーションと見なすことも出来る.自分と世界をつなぐ媒体になっている.離れた場所にいる人と共同作業ができる.リアルタイムで情報を得ることが出来る.人と人のコミュニケーションを媒介している.
  5. コンピュータが我々の生活にどう関わっているか:非常に便利で役立つ物.現代社会に不可欠.人間に出来ないことを可能にする.使い方を間違えると悪い結果をもたらす.様々な使い方が出来る.コンピュータに頼り過ぎると人間の思考力が低下する
  6. コンピュータの多様化と普及:スマホ,パソコン,メインフレーム,組み込み型など多様な形態を持つ.時代と共に急速に進化している.昔は専門的な物だったが今では誰でも使い知っている一般的な物.
  7. コンピュータの限界:人間なら簡単にできることができないこともある.壊れる.

辞書を引くと,技術面に焦点を当てた説明が出てくると思います.でも,上記に示すように,今のコンピュータは,我々にとって,技術を越えた存在となっています.

技術面に焦点を当てた説明:
  • 電子計算機.つまり,電気で動く,計算をする機械.
  • コンピュータとは、プログラムに従って演算を行う機械の総称。(IT用語辞典
  • コンピュータはハードウェアソフトウェアからなる.ハードウェアは,文字通り機械(電子機器)のことで,入力装置,出力装置,記憶装置,演算装置と制御装置(まとめてCPU)の5つの構成要素からなる.ソフトウェアは,文字通り手にとって触ることができないプログラム(ソフトウェア)のことで,オペレーティングシステム(OS)とアプリケーションに分けることができる.

    CPUは,ソフトウェアに示された命令の通りに動作して,キーボードからのデータ入力を受け付け,データを処理し,画面やプリンタなどい処理した結果を出力する.ソフトウェアも処理途中のデータも記憶装置に記憶されている.また最近のコンピュータはネットワークによって他のコンピュータとつながっており,データを転送することができる.コンピュータには,パソコンやスーパーコンピュータだけではなく,携帯電話や車などに組み込まれた(利用者の目には見えないところで働いている)コンピュータもある.

それ以外の面に焦点を当てた説明:
  • 現代の我々の生活との関わり
  • コンピュータの多様化,普及
  • コンピュータの限界
  • セキュリティの問題(個人情報の漏洩,クラッキング,マルウェアなど)
  • ...

コンピュータが我々の生活に及ぼす影響や利便性だけに焦点を当てて説明するとコンピュータの本質を見落とす可能性があります.しかし,コンピュータの原理や機能だけに焦点を当てて説明しても,我々の生活に深く入り込んでいるコンピュータについて説明し切れていないこともわかります.また,我々は実はコンピュータについてよく知らないし,知らないでも使えているということもわかると思います.電気がない生活を想像できないようにコンピュータがない世界も想像できませんね.

コンピュータと人間の特徴と比較

受講生で考えてみる(グループ・ディスカッション)

2013年度までの受講生の宿題をまとめた結果に,「アラン・クーパー著,山形浩生訳『コンピュータは,むずかしすぎて使えない!』翔泳社」に掲載されている表や「安西祐一郎『心と脳-認知科学入門-』岩波新書」なども参考にして追加しました.4年経過した2017年度でも妥当なところと時代遅れなところがあるでしょうか? 不足点は何ですか?

コンピュータと人間の比較
  コンピュータ 人間
  デジタル アナログ
構成要素に注目
頭脳(演算・制御) CPU(半導体回路の集積) 脳(ニューロンのネットワーク)
記憶 電子回路に記録 脳に記憶(短期記憶と長期記憶)
入力 キーボード,マウス,ネットワークなど 感覚器官,5つの知覚
出力 画面,プリンタ,ネットワークなど 発話,表情,身振りなど
通信 世界中のコンピュータが相互接続 コミュニケーション(対話,印刷メディアなど)
能力に注目
処理速度(計算能力) とても高速 とても低速
正確さ エラーなし エラーだらけ
記憶 巨大容量,永久保持,迅速アクセス 容量に制限,忘れる
持続能力 永遠?に疲労しない 短時間で疲れる,飽きる.
処理の仕方 順番に処理 ランダムに処理
繁殖 不可能 可能(両親の遺伝子を受け継ぐ)
運動 ロボットなら動ける オリンピック選手のような巧妙な運動も可能
心に注目
(今のところ)なし あり(脳のなか?)
言語とコミュニケーション ネットワークで世界中のコンピュータがつながっている 赤ちゃんは言葉を獲得.人間は他者と共感し豊かなコミュニケーション
学習 機械的・プログラム的な学習 自ら学び成長
思考 形式化された推論ならできる 知識や経験から学ぶことができる
感情 (今のところ)感情はない 感動!,時に感情に支配される
意志 (今のところ)意志はない 意志を持つ
理解・判断 プログラムの指示通りに動作 個人の知識や経験に基づき理解・判断
道徳 道徳無視 論理的
発達・成長 しない する
行動原理 予測可能(決定論的行動) 予測不能(不合理)
融通さ・(環境への)適応力・従順さ 文字通り解釈・適応しない 察することができる・適応できる
知性・創造性 (今のところ)知性や創造性はあまり感じない 知的・創造性
社会性 ない 他者との関係なしに生きていけない
そのほか
使用言語 二進数(C++,Java,...) 自然言語(日本語,英語,...)
エネルギー源 電気 炭水化物など
寿命 数年? 永久? 100年弱
個体差・個性 ほぼなし 多様
持たない 持つ

この表を見ると,コンピュータと人間の大きな違いは,「コンピュータは機械であり心を持たないが,人間は生物であり心を持つ」とまとめることができそうな気がします.また,コンピュータはデジタルな情報処理が得意で人間はアナログな情報処理が得意なこともわかります.

コンピュータと人間を比較するのではなく,もっと下等な生物とコンピュータを比較するとどうなるでしょうか? たとえば感情は,生物固有のものではないように思えます.

受講生が迷った点

受講生が判断に迷ったのは以下の点でした.これらの要素をコンピュータが持つのか,そもそもこれらの言葉の定義は何か? どう捉えればよいのか,という点で悩んだようです.

心とは何か?

人間を特徴付けているように見える「心」とは何でしょうか? 古来,多くの賢人達が「心とは何か?」について悩み,考え,宗教や哲学として発展してきました.コンピュータが存在しなかった時代は,人間と動物を区別する存在として心を捉えていました.また,心は心臓に存在すると考えていたこともありました.

その後,「我思う、ゆえに我あり」と看破したデカルト,理性を持つはずの人間の非合理的な行動を精神分析で解明しようとしたフロイト,人間の行動を観察することで科学的に心を学問しようとした行動主義心理学に続き,脳の動きとして心を捉える(科学する)認知心理学が生まれました.

認知心理学は,人間の認知(知覚,記憶,思考など,人間の心の働きや意識のこと)を,コンピュータの情報処理になぞらえてモデル化することで発達した部分があります.コンピュータのCPUに対応するのが人間の脳で,脳の情報処理の過程として人間の認知を学問しようとしています.この方向性がもっとはっきり表れるのが認知科学(Cognitive Science)で,心を科学的に究明しよう,知性を分析しようという学問分野です.

コンピュータのソフトウェアとハードウェア,さらにはハードウェアの5大機能(入出力,記憶,演算・制御)に対応する人間の要素や機能を考えてみると,両者の比較がしやすいかもしれません.コンピュータのハードウェアに相当するのが人間の身体でソフトウェアに相当するのが心と考えるのは,デカルトの「心身二元論」に通じます.両者とも入力機能,出力機能,記憶機能,計算機能,通信機能を持つけれども,機械であるコンピュータと生物である人間では,その機能の特徴がかなり異なっていると考えるわけです.

『心と認知の情報学』(石川幹人,勁草書房)の5ページでは,心とは以下の諸要素を含んだ複合概念のようであると紹介しています.

  1. 知的な行動の根源となるもの
  2. 自覚し反省する自己意識や身体意識
  3. 自由な意思決定や主体的判断
  4. 新たなものを見出す創造性や直感
  5. 「について」という内容表示(志向性)
  6. 痛みや赤さなどの感覚質(クオリア)

...

ここから少し話の方向性が変ります.デカルトより少し先に生まれた哲学者であるホッブスは,「心とは計算することである」と主張しました.つまり,心もまた計算機であると考えたのです.(ここで言う計算は四則演算だけではなく,記号と記号を一定の規則に従って結びつける操作も含んでいることに注意.翻訳とか質疑応答は記号処理のイメージに近いかも知れません.)

この考えは,人工知能の可能性を示唆します.考えること(心)が計算ならばコンピュータも考えることができ,心を持つかも知れないわけです.1950年代後半から1980年代にかけて人工知能の開発が活発に行われましたが,人間と同じような知能はまだ実現していません.人工知能の研究は多くの挫折を味わいましたが同時に人間の知能とは何か,意識とは何か,心とは何かに関して多くの知見を与えています.

ところで,「心」と似た言葉に「意識」があります.意識と心はどう違うのでしょう?

知能とは何か

コンピュータに知能をもたせようという人工知能の研究は昔から活発に行われていて,何回かのブームというか大きく進展した時期がありました.実は今はニューラルネット(人間の神経回路を模した人工知能)やディープラーニング(機械学習の一種)などともに大きく進展しようとする時期なのです.最近もコンピュータ(IBMのディープ・ブルーというスーパーコンピュータ)がチェスの王者に勝った話とか,将棋でプロ棋士に圧勝した話などが話題になりました.GoogleもFacebookも人工知能の開発に力を入れています.その成果の一部として,自動運転できる車も話題になっています.また,画像認識の性能も向上していて,写真に何が写っているのかをかなり正確に判定できるようになっています(その単純な例がPicasaやFacebookなどにある画像中の顔の自動認識).Siriをはじめとする音声認識の精度が向上しているのもこれに関係しています.(参考:ディプラーニングの例をこの顔の自動認識に見ることが出来ます.システムが提案する顔の人物名に対し人間が正しいとか間違っているとか判断することでシステムが学習し,認識精度を向上させているのです.)

『AIの衝撃-人工知能は人類の敵か』(小林雅一,講談社現代新書)は,「自ら学んで成長する能力」を身につけたロボットなど,最近の人口知能をまとめた本です.

アラン・チューリングは以下の方法で人工知能が完成したかどうか判断できると言っています.つまり,カーテンの向こうにいる何かと会話して,それが人間であるかコンピュータなのかを判断させ,コンピュータが対話しているのに人間だと判断されたら人工知能が完成したことになるわけです.

最近の大きな話題の一つに,著名な理論物理学者ホーキング博士やノーベル賞受賞者などの知識人が,AIの危険性,AIによって人類が破滅する,を訴えたことがあります.2045年頃にはAIが人間の知性を超えるという予想もあります.君たちが55歳になる頃にはどういう世界になっているのか僕には想像もつきません.今ある職業の半分ほどがAIにとって代わられるだろうという予想もあるのです.

以下の様なキーワードが人工知能に関連しています:エクスパートシステム,フレーム問題,暗黙知,計算量,創造性,アフォーダンス,心の理論,ニューラルネットワーク,ビッグデータ,ディープラーニング,ベイズ定理,暴力的(力ずく)AI,弱いAI,強いAI(人間のような知性や意思をもつ)

ここに書いた話の詳細を知りたい人は『AIの衝撃-人工知能は人類の敵か』(小林雅一,講談社現代新書)を読んでみてください.

アルファ碁の衝撃

2016年3月,Googleが開発した人工知能「アルファ碁」が韓国の李世ドル九段に4勝1敗と完勝しました.チェスや将棋で人工知能が人間に勝てても,囲碁で勝つにはまだまだ性能が足りないと思われていたのが覆されたのです.

「AlphaGoは、ディープニューラルネットワークを用いて実装された「value network」と「policy network」によって動くモンテカルロ木探索を用いる[1]。AlphaGoは当初、棋譜に記録された熟練した棋士の手と合致するよう試みることで人間のプレーヤーを模倣するように訓練され、次に、ある程度の能力に達すると、強化学習を用いて自分自身と多数の対戦を行うことでさらに訓練された」(Wikipedia)とあるように,アルファ碁は自ら学習する能力を持っているのです.

[1] “Research Blog: AlphaGo: Mastering the ancient game of Go with Machine Learning”. Google Research Blog (2016年1月27日)

アルファ碁に関する詳細は,例えば「アルファ碁の勝利とAIの進化:囲碁AI「アルファ碁」が世界トップ棋士に勝利の衝撃! 進化する人工知能」(日経BP)参照.

人間とコンピュータのコミュニケーション

コミュニケーションとは何なのでしょう? 違う心や意識を持つ他者との関わりや情報交換がコミュニケーションなのでしょうか.

だとすると,人間がコンピュータにデータや命令(プログラム)を入力し,コンピュータがそれを処理(計算)し,その結果を人間に伝えることを人間とコンピュータのコミュニケーションと捉えることもできます.デジタルなコンピュータとアナログな人間の間には界面(境界,インタフェース)があるので,人間がコンピュータに接する部分をユーザ・インタフェースと言います.コンピュータの入力装置であるキーボード・マウス・マイク(音声入力)や,出力装置であるディスプレイやスピーカがインタフェース装置です.インタフェースの設計(デザイン)が優れていれば使いやすいだろうし,設計が悪ければ使いにくいだろうことは容易に想像できると思います.

インタフェース(境界)という言い方は静的なイメージを与えます.実際は,人間がコンピュータに入力し,結果の出力を受け取り,さらにそれを元に別の入力をし,,,というように人間のコンピュータ利用はもっとダイナミックな動きです.これをインタラクションといいます.ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(Human-Computer Interaction,HCI)という言葉はこのことを示しています.さらに,スマホのような情報通信機器に取り囲まれている現代の我々の生活をよくするためには情報通信機器(ハードウェア,ソフトウェア,システム,サービスを含む)をどうデザインすればよいのかという「情報デザイン」という分野もあります.

進化するコンピュータの例

毎年の進化が激しいので別ページに「進化するコンピュータの例 (2015年度版)」をまとめました.

コンピュータのどこが苦手か?

受講生で考えてみる(グループ・ディスカッション)

これまでの受講生の回答をまとめてみました.相手がコンピュータだから生じる問題と相手が人間でも乗じそうな問題がありますね.

ハードウェア関係:
  • すぐにフリーズする.
  • 予告なく,急に強制終了させられる.
  • 故障しても自分では直せない.
  • 壊れやすいので気を遣う.
  • 記録装置が故障すると(大量の)データを(一瞬で)失う.
  • ネットワーク接続が急に悪く(遅く)なる.
  • 重たいソフトを動かしたり複数のソフトを立ち上げたりするなどによって,動作が極端に遅くなる.
  • (Windows Updateがバックグラウンドで動作していたり,ハードディスクのアクセスが集中していたり,ウイルス検索ソフトが活発に動いたりしている場合もあるが,いずれにしても利用者には理由がわからないまま)急に動作が遅くなる.
  • 画面表示などの動作が遅い.
  • 水に弱い.
  • カーソルが勝手に動く.
  • キーボードにあるボタンの種類が多すぎて,使いこなせない.
  • 付属品が複雑.
  • 電池がなくなったら終わり.
セキュリティ関係:
  • ウイルスや情報漏洩などの脅威が多い.
  • コンピュータウイルスに注意しろと言われても形がないので実感がわかない.
  • 悪質なサイトに気づかず飛んでしまうことがある.
  • ウェブ上にあるどの情報が正しいのか判断できない.
  • 「インストールしてください」というメッセージが出た際,インストールしても大丈夫なのか(信頼できるソフトなのか)心配になる.
  • パスワードがありすぎる.
  • 位置情報,検索履歴,操作履歴など大量の個人情報を取得されてしまう.
(知識不足で)意味不明・対応不能:
  • 英語やカタカナ言葉が多いばかりではなく専門用語も多いので,説明を読んでもわからない.
  • 使い方が不明なときにヘルプを見てもカタカナ言葉が多すぎて意味不明.(ヘルプを読めば解決方法がわかるという人もいる.)
  • 説明書が厚く複雑.(逆に,最近のコンピュータにはきちんとした説明書が付いてこない.)
  • 仕組みがよくわからないから,)不具合が生じても自分では解決できない.
  • (用語やハード・ソフトに関する)ある程度の知識がないと使えない.
  • アイコンなどのマークが多すぎて,何を意味しているのか不明.
  • コンピュータやネットワークの初期設定が意味不明.
  • エラーや意味不明の表示が出たときの対処方法がわからない.
  • 機能が多すぎて,どれが何をするためのものかわからず,結局使いこなせない.
  • その操作をするとどうなるかがわからないことが多い.(「はい/いいえ」の質問が出たときにどうすればよいのかわからない.)
操作関係:
  • 仮名漢字変換中,勝手に英字入力やカタカナ入力に変わってしまう.
  • 自分が入力したい漢字に変換してくれない.
  • OSによって操作方法が異なる.
  • 自分で字を書くよりもタイピングに時間がかかる.(タッチタイピングができるのでタイピングの問題は感じないという人もいる.)
  • 意図したとおりに動いてくれない.融通が利かない.
  • 操作を間違えても元に戻せないことがある.
  • アプリケーション(ソフト)の使い方がわからない.
  • 操作を間違えると,おかしくなる.
  • ちょっと操作を間違えただけでデータが消える.
  • 操作の手順(順番)を少し間違えただけで失敗する.
  • 説明書の通りに設定や操作をしたはずなのにうまくいかない.
  • 操作後の変化がわかりづらい.
  • 身体に負担がかかる.(姿勢,視力,認知)
そのほか:
  • 文字化けする.
  • どこが悪いのか自分でしゃべってくれない.
  • 融通が利かない.少しでも間違うとエラーになる.(最近のGoogle検索は,検索語の間違いを指摘してくれるので助かるという意見もある.)
  • 苦手すぎて,どこが苦手か指摘できない.(初心者用のわかりやすい説明書が欲しい.)
  • 他人に教えるのが難しい.
  • 新しい機能が次々に追加される.
  • アップデートや新機能や新ソフト追加などで,始終インストールさせられる.
  • ポスター作成時など,手書きのように自由自在に描けない.
  • 肩が凝る,ドライアイになる.
  • Excelの計算式がわからない.
  • 情報が多すぎて処理できない.
  • コンピュータとコミュニケーションがとれない.
  • 進化(変化)が早すぎて追いつけない.

コンピュータとのつきあい方

結局,コンピュータと人間の本質的な違いは何でしょう? 技術が発展すればコンピュータ(ロボット,アンドロイド)は人間に近づくのでしょうか?

そうした疑問はさておき,我々が生きているこの時代では,両者にはまだまだ違いがあります.この違いを生み出している原因は何なのでしょうか? 同じところはないですか? 人間の方が優れている箇所はどれでコンピュータの方が優れている箇所はどこでしょうか?

人間とコンピュータの違いとその理由がわかれば,なぜコンピュータが扱いにくいか,苦手なのかの理由がわかると思います.また,コンピュータはどう改善されるべきかの方向性もわかるでしょう.コンピュータが発達して人間のような心を持てば使いやすくなるのか? 人間とコミュニケーションするためにはコンピュータにどのような機能が必要なのか? 今のコンピュータはそのような機能をまだ持たないが,どこを工夫すれば改善されるのでしょうか?

コンピュータより人間の方が優れている箇所や人間の方が得意な仕事があることに注意してください.コンピュータが得意な作業ではコンピュータを使い(being digital),人間の方が得意なことはコンピュータを使わない(being analog),その使い分けができることも重要なICTスキルです.

セキュリティとプライバシー

コンピュータが大量の情報を処理する現代において重要となるのが自分のプライバシーとセキュリティをどう守るかということです.これについては授業の後半で扱います.

アナログとデジタル

人間はアナログでコンピュータはデジタルである例をひとつ取り上げます.

実技課題:アナログデータのデジタル化

アナログとデジタルに関する参考情報例:「アナログ」と「デジタル」,「【今さら聞けない用語シリーズ】デジタルとアナログの違い、サンプリングとは?」など.

地上デジタル放送も,これまでアナログデータで送信していた番組をデジタルデータで送信するという大転換です.4Kや8Kという新技術の名前は,今の地上デジタル放送の解像度(フル・ハイビジョン.横1920個×縦1080個の画素数)を4倍(縦横共に画素数を2倍にする)や8倍にして放送することを示しています.

コンピュータは電気信号のON/OFF(つまり,二進数の1/0)でデータを示している(コンピュータの言語は二進数)なので,デジタルな機械ですが,人間は連続した値を扱えるのでアナログです.

文字について

アナログデータのデジタル化の例として上記課題をしましたが,「文字」はコンピュータと人間の関わりのおもしろさ・難しさを示す良い例なので,もう少し詳しく取り上げます.コンピュータができる前から人間は文字を使ってきました.その文字をコンピュータが取り扱うようにするには,いろいろなことを考える必要があったのです.

  1. 文字集合:僕の名前は戸籍には「渡邉」と書かれていますが,「辺」と「邊」と「邉」は同じ文字(字体)でしょうか? しんにょう(辶)にも一点しんにょうと二点しんにょうがありますが,両者は同じ部首ですか? 手書きの文字には鉛筆で書く文字もあれば毛筆で書く文字もあり,書道家の書く文字などは素人が読んでもわからないほど崩されている場合もあります(書体の違い).どの字と字は同じ文字と考えるべきで,どれは違うと考えるべきなのでしょうか? 人間が生活していくために必要な文字を集めて(似た字は同じ文字として)整理した物が文字集合です.
  2. 長年の懸案だった“外字問題”が解決へ、6万字を1万字に対応付ける「縮退マップ」が完成」,(UCS関連文字マップ
  3. グリフ(字形):文字集合に含めたある文字の形をグリフと言います.先の課題で「あ」という文字を各自に書いてもらいましたが,各自でグリフを決めたわけです.同じ字でも違う字の形(グリフ)で書くこともできます.この課題のように字形をデジタル化することで,文字の形(フォント)をコンピュータに保存できるようになります.
  4. 文字コード:文字集合(符号化文字集合)をコンピュータで扱うためには,文字集合に納めた文字毎に固有の数字(コード)を割り当てる必要があり,これを文字コード(文字エンコーディングスキーム)と言います.日本語にはJISコード(ISO-2022-JP),シフトJIS(Shift_JIS),EUC-JPなど複数の文字コードがあり,文字をコードに変換する際のルール(文字コード)と,変換された文字コードを文字に戻す際のルール(文字コード)が異なると,いわゆる文字化けを起こすことになります.
    代表的な英字の文字コード:0(0011 0000),1(0011 0001),....,A(0100 0001), B(0100 0010),....,a(0110 0001),....
  5. Unicode:韓国や中国の人とメールのやり取りをしたことはありませんか? 本文は英語で書いても,メールの差出人は「渡辺隆行 <nabe@xx.yyy.zzzzz.jp>」のようにその国の文字で書いてあるために文字化けしてしまって読めなかったことはあありませんか? 日本と中国と韓国(ハングル以前)には共通する文字が多いのに文字化けしたり表示できなかったりするのは,各国で用いている文字コードが異なるからです.世界中の文字を集めて(世界共通の文字集合を作る),世界共通の文字コードを決めたら,このような文字化けはなくなります.そのような背景で作成されたのがUnicode(の文字コード,UTF-8やUTF-16など)です.僕がウェブページを書くときは,UTF-8を使います.しかし,日本と中国と韓国のように同じ漢字文化圏であっても,それぞれの国で用いられる字体は微妙に異なります.Unicodeはそういう異なる字体(字源的には同じだが字形の異なる中国語、日本語、朝鮮語、ベトナム語の漢字)も同じ文字としてまとめてしまったので,Unicodeを使うことに異論を唱える人もいます.

この授業の目標

どうすれば人間様が使いやすいコンピュータ,さらには情報通信技術ができるのか,それをこの授業で考えてみたいと思います.「情報通信技術と人間の関わり」という授業題目は,このことを示しています.

「人間編のまとめの宿題」

人間

この章は,人間側の基礎知識を身につけることが目的です.人間編では,まず,情報通信システムを利用するユーザである人間の特徴を,認知心理学(認知科学)と人間工学に焦点を当ててお話しします.(ここでは,認知心理学や人間工学のごく一部しか扱っていないことに注意.)

認知心理学(認知科学)

ここでは,コンピュータの1種として人間をとらえることで人間の情報処理の過程を明らかにする考え方を紹介します.つまり,外界の情報が人間に入力され,認知過程で情報処理されて,出力されるという見方です.人間の情報処理過程に焦点を当てて考えると,以下のプロセスで表現できます.

  1. 知覚システム:視覚・聴覚・触角などの知覚プロセッサが,それぞれ得た知覚情報を処理し,視覚イメージストアや聴覚イメージストアなどに一時的に情報を蓄える.
  2. 認知システム:イメージストアに蓄えた情報の意味を解釈する.処理した情報は短期記憶や長期記憶に記憶される.また,意味の理解や判断なども行われる.
  3. 運動システム:認知システムの処理の結果,意図をもって外界に働きかける.

知覚

外界の物理的刺激を感覚器で受容し,中枢神経系で処理された結果,意識にのぼる過程(perception)または意識される内容(percept)を指す.視覚を例にとると,網膜の光受容細胞で受容された視覚情報は,外側膝状体を経て,大脳皮質へ至る.大脳皮質における情報処理の結果,眼前にある世界を意識体験する過程が知覚過程でありその内容が知覚である.知覚は,脳が情報処理の結果生み出したものであり,外界世界の単なるレプリカではない.それは,例えば,光情報を受けているのが網膜の一平面上に並んだ光感受性細胞であるにもかかわらず,明確な立体感を伴って世界を見ることからも明らかである.

(日本認知科学会編:「デジタル認知科学辞典(初版)」共立出版)

視覚:
明るさ,色,形,文字が読める,...
聴覚:
大きさ(ラウドネス),高さ(ピッチ),可聴周波数,言葉として聞こえる,..
触覚(皮膚感覚):
形,...
そのほか:
味覚や嗅覚なども知覚

記憶と理解

  1. 感覚記憶:視覚は数百ミリ秒,聴覚は数秒間保持できる.「ホッタイモイジルナ!」,「しらんぷり」,「はまち」.「意味」に符号化されずに感覚情報のまま貯蔵されていることに思い当たると思う.
  2. 短期記憶:15から30秒間は保持できる.7チャンクの情報しか記憶できない.リハーサルやコーディングなどの記銘処理をしないと忘れてしまう.
  3. 長期記憶:ほぼ永久に忘れない.容量に限界がない?

長期記憶はさらに,宣言的記憶と手続き的記憶に分類されます.宣言的記憶はエピソード記憶と意味記憶に分類されます.

『グラフィック認知心理学』の14ページ「1.2 記憶の区分」から,これらの例を紹介します:

理解:文章の理解(言語理論,...).「理解できる,わかる」とはどういうこと?

知覚,認知(理解・記憶),運動(操作)

外界の情報を知覚し記憶しても,理解できなかったらその情報を利用できない.また,理解しにくかったり間違いやすい情報はエラー(誤解.間違い)を引き起こす.知覚して理解して記憶できても,操作を間違えたら操作ができない設計だったらコンピュータなどの装置やシステムを使えません.このことは,後で述べるユーザビリティ,ユニバーサルデザイン,アクセシビリティを考える際に重要なポイントとなります.

Cardらのモデル ヒューマン プロセッサ

西海岸にあるゼロックスのパロアルト研究所(PARC)に勤めていたCardら[1]は,1983年に,時間や容量の特性(性能)に注目してユーザとしての人間の情報処理過程を定量化した 認知的モデル を提唱しているので,それを紹介します.このモデルを使えば,車を運転中に障害物を発見してからブレーキを踏むまでにかかる時間なども計算できます.

[1] Card, S.K, Moran, T.P, and Newell, A. "The Psychology of Human-Computer Interaction", Lawrence Erlbaum Associations. (1983).

図:Cardらの認知的モデル(出典:海保他『認知的インタフェース』(新曜社)図II-9)

 

確認問題:

 

認知心理学(認知科学)は通年で学ぶべき科目ですので紹介はここで終わって,次節からは,ヒューマン・コンピュータ・インターラクションの見地から見た人間の認知と行動に関するわかりやすい話題として,「ゲシュタルト心理学」,「アフォーダンス」,「ノーマンのモデル(行為の7段階理論)」,「ラスムッセンのモデル」,「ヒューマン・エラー」を紹介します.

人間と操作対象のインタフェース

海保・原田・黒須の『認知的インタフェース』から,コンピュータと人間のインタフェースに関する図をふたつ紹介します.

『認知的インタフェース』の「道具,機械,そしてコンピュータ-道具的システムから知的システムへ」にある図I-5「道具,機械の進化」 には,石器時代の人間が道具を用いて対象を直接操作していた時代から,人間が操作するのはコンピュータ(情報処理装置)で,その情報処理装置が(ネットワークでつながっている)他の情報処理装置を動かして,さらにそれが(機械などを用いて)対象を操作している現代の様子が描かれています.このように操作する人間と操作される対象の間の人間側に知的インタフェースが入っているのが現代の特徴です.そしてこの多重性が,(直接操作できていた昔と比較して)対象を操作することを困難にしています.また,インタフェース・デザインが重要になっている理由です.

図:道具,機械の進化(出典:海保他『認知的インタフェース』(新曜社)図I-5)

同じく「インタフェースとコンピュータと」の図I-6「ユーザと道具.機械と対象と」 には,人間の心理的世界と対象の物理的世界の間には道具・機械の世界が存在していて,心理的世界と道具・機械の世界の間の「第一接面」と道具・機械の世界と物理的世界の間の「第二接面」があると説明されています.

石器時代や産業革命より昔の時代は物理的な道具を用いて対象に働きかけていたので,第一接面と第二接面は同一でした.でも情報処理が発達した現代社会では,2つは別物となっていることに注意してください.この授業で言うインタフェースは第一接面のことですが,第二接面のことも考えないと対象がどう動くのか予想できません.

図:ユーザと道具・機械と対象と(出典:海保他『認知的インタフェース』(新曜社)図I-6)

後述する「ノーマンのモデル(行為の7段階理論)」でも,ユーザの心理的世界とシステムの物理的世界の間にある2つのギャップ,「実行の淵」と「評価の淵」,をいかに短くするかが議論されています.

図:ノーマンのモデル(出典:海保他『認知的インタフェース』(新曜社)図II-11)

確認問題:

ノーマンのモデル(行為の7段階理論)

人間は,単に知覚して理解して操作しているだけではありません.情報通信機器(製品)を使うユーザは,意図を持って行動しています.ユーザは,行動の結果を評価して,やり直したり別の行為に移ったりしています.この人間の「行為」全体に焦点を当てたモデルが,D.A.Normanの「行為の7段階理論」です.一般に,ユーザが何かを使用するとき,それをどう使用すればよいのかを理解する「実行」時の問題と,使用した結果何が生じたのかを理解しようとする「評価」の問題に直面します.以下,『誰のためのデザイン?』(D.A.ノーマン著,野島訳.新曜社)と『誰のためのデザイン? 増補・改訂版』から要点をピックアップします.

何かタスクをおこなうときは,そのゴールに向かって何かをしたいという意図がある.その意図に基づいて実際の行為を行う.そして行為の結果を評価する.

外界状況の知覚->知覚の解釈->解釈の評価->ゴール->意図->意図に基づく行為系列の形成->実行

  1. ゴールの形成:暗くなってきたので部屋を明るくしたい.
  2. 意図(行為のプランを立てる):蛍光灯をつけよう.
  3. 行為系列の詳細化:蛍光灯スタンドのスイッチを入れる.(行為の詳細化:腕を伸ばして,指をスイッチの位置に合わせて,適切な力でスイッチを押す.)
  4. 実行:(行為の結果,外界に変化が生じるはず)
  5. 知覚:明るくなった.
  6. 理解・解釈:蛍光灯がついたから明るくなったのだ.
  7. 評価・比較:ゴールと結果を比較することで,意図通り蛍光灯がついたからゴールが達成されたと評価できる.

「行為の7段階理論」を使うと,ユーザである人間がまずゴール(したいこと,目標)を形成し,次にそれを実行(意図の形成,行為の詳細化,行為の実行)し,最後に評価(外界状況の知覚,外界状況の解釈,結果の評価)するサイクルを繰り返していることがわかります.ユーザである人間の心理的世界と捜査対象であるシステムの物理的世界は別物なので,ユーザは実行時にこの間のギャップを(意図,行為系列の詳細課,実行というステップを経て)飛び越え,評価するときにもギャップを(知覚,理解,評価というステップを経て)飛び越える必要があるわけです.

行為の7段階理論に基づくデザインのチェックリスト(『誰のためのデザイン?』,図2-7)
  1. システムの状態を知覚できるデザインになっているか?
  2. 知覚されたシステムの状態とユーザの解釈の間によい対応付けができているか?
  3. システムが期待通りの状態であると評価できるようなデザインになっているか?
  4. 装置の機能がすぐにわかるデザインか?
  5. どんな操作が可能かわかるデザインになっているか?
  6. ユーザの意図と実際の動作によい対応付けができるデザインか?
  7. 意図した行為を実行できるか?
デザインの7つの基礎的な原理(『誰のためのデザイン? 増補・改訂版』p101)
発見可能性
どのような行為が行えるのか,機器の今の状態はどうなっているのかが判断できる.
フィードバック
行為の結果と製品やサービスの現在の状態についての完全かつ継続的な情報がある.行為が実行された後,新しい状態がどうなったのかが分かりやすい.
概念モデル
デザインは理解と制御感につながるように,システムの良い概念モデルを作るのに必要なすべての情報を伝える.概念モデルは,発見可能性と評価の両方を向上させる.
アフォーダンス
望ましい行為を可能にするために適切なアフォーダンスがある.
シグニファイア
効果的にシグニファイアを利用することによって,発見可能性を確かなものにし,フィードバックが理解可能なかたちで伝えられる.
対応付け
制御部と行為の間の関係は良い対応づけの原理に従う.それは,可能な限り空間的なレイアウトや時間的な接近によって支えられる.
制約
物理的,論理的,意味的,文化的な制約を与える.これによって行為を導き,解釈のしやすさを助ける.

以下,各原則のいくつかの例を挙げます:

よい概念モデル
ある製品やシステムがどのような物でどのように機能するかのイメージが利用者にわかっていて,そのイメージ(概念モデル)が正しいなら,初めて見た物でも説明書無しに使える.適切な概念モデルを持っていれば,製品やシステムを操作した結果を予想できる.
適切な対応付け
一つのボタンが電源オンとオフの二つの機能を兼ねている場合(モードがある場合)は,ボタンの状態を見ただけでは電源が入っているかどうかわからないので対応づけが悪い.オンにすると引っ込んでオフにすると出っ張るボタンはシステムの状態と見た目に自然な対応づけ(ボタンが引っ込んでいる方をオンだと自然に解釈できる)がある.車のハンドルを右に回せば車は右に曲がり,ハンドルを左に回せば車は左に曲がるのも良い対応づけの例.これが反対だったら大変です.左右に回るハンドルではなくて,前後にしか動かないスティックだったら,スティックを前に押すと車がどちらに曲がるのか予想できない.つまり,自然な対応づけが出来ない.
フィードバック
タッチパネルは押した感覚がないのでユーザは不安になる.正しく押したときに「ピッ」と音が鳴ったり,タッチパネルが振動すると,ユーザは自分が押したことがわかる.電話機も押した数字に応じてピポパと鳴るので安心して操作できる.
制約

はさみの形は指を入れる場所を自然に制約するので,説明書がなくてもハサミを使うことが出来ます.

今まで普及してきたUSBコネクタには表裏があるので正しい向きにしか挿すことができません.(新しいUSB Type-Cコネクタは向きがなく,表裏を気にすることなく挿すことができます.) 

パソコンにはたくさんのコネクタがありますが,コネクタの形によって,電源プラグ,USBケーブル,RGBケーブル,HDMIケーブルなどを正しい場所に接続することができます.

Normanの『誰のためのデザイン』は,これ以外にも面白い話題が沢山の例と共にあげられているので,是非読んでみてください.

確認問題:

ラスムッセンのモデル

『インタフェースの認知工学-人と機会の知的かかわりの科学』(海保他訳,Rasmussen著,啓学出版,1986)から,ラスムッセンの行為の3段階モデルを紹介します.プラント(発電所など)における緊急事態発生時の人間の行動の研究から作られたモデルです.外界の出来事を感覚器官が知覚したときに(人間は自動的に行為を行いますが),人間の行為には3段階(技能ベース,規則ベース,知識ベース)あることを示しています.ここで,技能ベースの行動はシグナル(連続的な信号),規則ベースの行動はサイン(ルールと照合するパターン),知識ベースの行動はシンボル(意味を表す)として情報を知覚します.

『コンピュータと人間の接点』(黒須・暦本著,放送大学)の「1.1.6 ラスムッセンのモデル」から,自動車を運転している場面で3段階の行動を説明しましょう.

同じ状況でも人間の習熟度によってどの段階の行為になるかは変わります.訓練(練習)するのは知識ベースの行動を技能ベースにまで自動化したいからです.同じ赤信号でも,人によってシグナルになったりサインになったりシンボルになったりします.

図:シグナル,サイン,シンボルと行為との関連(出典:海保他『認知的インタフェース』(新曜社)図II-8)

ヒューマン・エラー

"To err is human, to forgive divine(誤るは人の常,許すは神の業)"という言葉を聞いたことがあるでしょう.人間とコンピュータの比較でも,コンピュータは間違えないが人間はしょっちゅう間違えるという違いが指摘されました.そこで同じくNormanの『誰のためのデザイン?』から,「(アクション)スリップ」を紹介します.

人間のエラーは二つのカテゴリーに分類できる:スリップ(自動化された行為で生じる誤り.適切なゴールを形成できたのに行為の段階で誤った.)とミステイク(意識的によく考えているのに誤ってしまう.ゴールの設定間違い.)

スリップの例
  • 遊びに出かけるつもりが,気づいたら大学に行くいつもの駅に向かっていた.(乗っ取りエラー)
  • 考え事をしながらコーヒーを飲もうとしたら砂糖のつもりで塩を入れていた.(記述エラー)
  • 蓋の空いた洗濯機に洗い物を投げ込もうとして蓋の空いたゴミ箱に投げてしまった.(記述類似性エラー)
  • リンゴの皮を剥いて皮でなくてリンゴの方をゴミ箱にポイと捨ててしまった.(記述類似性エラー)
  • 買いたい物があってコンビニまで出かけたのだが何が欲しかったのか忘れてしまった.(活性化消失(物忘れ)エラー)
  • 電話が鳴ったので思わず「お入りください」と言った.(連想活性化エラー)
  • ホテルのアラーム時計を午前7時にセットしたつもりなのに午後7時に鳴った.(モードエラー)
  • メガネを探したら顔にかけていたことに気づいた.(モードエラー)
  • ホテルの連絡先を言おうとして目の前の紙の番号を言ってしまう.(データ駆動型エラー)
  • 同じ形のボタンが並んでいるWebページで間違ったボタンを押してしまった.
  • PCで不要な画像ファイルを複数消しているとき,間違って必要なファイルまで消してしまう.PCは「このファイルを消していいですか?」と聞いているにもかかわらず,「はい」をクリックしてしまった.
  • 言い間違い,言った本人は言葉を間違えていることに気づいていないので,何回聞き直しても要領を得ない.

コンピュータは「スリップ」間違いを犯しません.でも,コンピュータに与えた人間の命令が間違っていたら,「ミステイク」を犯すかもしれません.ユーザである人間は「スリップ」間違いを犯す生き物であるので,このような間違いを防ぐデザイン,間違いが生じたときでも致命的にならないデザイン,間違いを正すことが容易なデザインが必要であることがわかると思います.

ゲシュタルト心理学とデザインの法則

人間の知覚に関する話題として「ゲシュタルト心理学」を紹介します.ゲシュタルト心理学は,人間の精神を,部分や要素の集合ではなく全体性や構造に重点を置いて捉える(全体は部分より大きい,つまり,部分を個別に分析して集めても全体を得ることはできない)考え方です.この全体性を持ったまとまりのある構造をゲシュタルト(ドイツ語で,形,形態,構造の意味)といいます.このゲシュタルトを人間が知覚するときの法則をデザインに適応できます.(「ゲシュタルト崩壊」といって,図形や文字の全体像を把握できず,構成する部分を個別にしか認知できない状態も知られています.)

ゲシュタルトの7原則

近接
近接しているものはひとまとまりになりやすい(グループとして捉えられる)
類同
同種のもの同士がひとまとまり(グループ)になりやすい
連続
幾つかの曲線になり得る刺激があるとき,良い曲線(なめらかな曲線,切れ目や変化のない線)として連続しているものは一つとして見られる.
閉合
互いに閉じあっているもの同士はひとまとまりになりやすい
共通運命
移動報告や変化の周期が同じものをひとまとまり(グループ)としてたらえやすい
面積
重なっている図形では面積の小さいほうが主として認識されやすい
対称性
対象な図形ほど認識されやすい

個々の感覚刺激が知覚の原因ではないことを示す実験を紹介します:それぞれ,上から下と,下から上へと上下反対方向に動く光の点滅を左右同時に被験者に提示します.想像がつくように,被験者は,それぞれ光が上から下と,下から上へと移動するように見えると報告します.でも,個々のランプは点滅しているだけです.全体のパターンから光の「移動」が知覚されたのです.

これに似たものとして,『ノンデザイナーズ・デザインブック』の13ページには上手なデザインのための「4つの基本原則」が挙げられています:

コントラスト
前景色と背景色のコントラスト,ページの要素間のコントラストをはっきり区別してどれが重要かをはっきりさせる.
反復
色や形などのデザインを繰り返すことでパターンが生まれる.一貫性.
整列
整列しているものはグループ化される.要素を散らかさない.意識して配置する.
近接
関連する項目は近くにおいてグループとして捉えられるようにする.スペース(隙間)を上手に使う.関係ないものをつか付けない.

身の回りのデザイン(看板,ポスター,チラシ,Webページなど)をこれらの観点で見なおしてみてください.どのような工夫がしているでしょうか.どの観点が欠けているからデザインが悪いのでしょうか?人間の知覚の特性を知れば,わかりやすいデザイン,良いデザインを考えることができるでしょう!

確認問題:

アフォーダンス

『アフォーダンス -新しい認知の理論』(佐々木正人著,岩波書店)から,知覚心理学者のJ.J.Gibsonが提唱した「アフォーダンス」という概念を紹介します.(アフォーダンスはゲシュタルト心理学から発展しています.)

「人間編」の冒頭で,「コンピュータの1種として人間をとらえることで人間の情報処理の過程を明らかにする考え方」を紹介しました.これは,知覚システムが感覚器に受けた刺激を処理し,認知システム(脳)がその情報の意味を解釈するモデルです.コンピュータで言うと,カメラが外界を撮影し,画像データとして外界のイメージを記録します.コンピュータはその画像データを分析して,画像データに含まれている情報を抽出することに相当します.

しかし,人間の認知過程は本当にこのようになっているのでしょうか? 高度な人工知能を持ったロボットは,高性能なカメラと高性能なCPUを持っていれば,カメラに写ったデータを処理して,人間のように行動できるのでしょうか? ロボットを取り巻く世界(環境)にはありとあらゆる情報があふれています.人工知能を持ったロボットは,それらの情報をすべて処理して,何が自分の行動を妨げ,何は関係しないのかをすべて判断しなければ,一歩たりとも足を踏み出すことができません(「フレーム問題」).でも人間なら,環境の何が自分の行為に関係していて何は関係しないのかを一瞬のうちに判断して,関係ないことは無視して行動しています.

このような背景から,Gibsonは,人間の認知を説明する新しい理論を提唱しました.Gibsonは,情報は,刺激が脳で処理された結果生み出される物ではなくて,外界(環境)そのものにあると考えました.知覚は,外界にある情報を直接手に入れる活動である.環境には「持続と変化」という情報があり,人間はその情報を知覚していると考えたわけです.

一つの例(刺激の配列)として,『新版 アフォーダンス』の39ページにある「光のトンネル」を紹介します.別の例

別の例を上げます.

コネチカット大学のウイリアム・ウォーレンは,スライドで壁にさまざまな高さのバーを投影して,どの高さなら「手や膝をつかずに脚だけで登れる」かを視覚的に判断させた.平均身長160cmのグループも,190cmのグループも,ぎりぎりで登れると判断した高さは,知覚者の股下の長さの0.88倍のところだった.(『アフォーダンス』,p58)

このほかにも「肩を回さなければ通り抜けられない隙間の幅」,「手を使わずに座れる椅子の高さ」,「またぐことができないバーの高さ」などのいろいろな値が,環境を知覚している人間の身体の大きさを基準にしていることがわかっています.

これらの値が「アフォーダンス」です.「アフォーダンス(affordance)」は,環境が人間に提供する価値というか環境の性質を示します.「この石は投げることができる」,「この石には腰掛けることができる」という「石のアフォーダンス」は,石自体の物理的性質ではありません.人間が石に見いだす情報(環境の性質)です.

「アフォーダンス」という概念は,人間とコンピュータの(情報処理の)違いを表している点で興味深いだけでなく,「使いやすいデザイン」を考える上でも重要です.ドアのデザインが「引いて開くドア」をアフォード(signify)していたら,間違ってドアを押してしまうことはなくなるでしょう.Webページの画像が「クリックできる画像」と「クリックできない画像」を正しくアフォード(signify)していたら,どこをクリックするべきかわからなかったり,間違って画像をクリックしてしまったりすることはないでしょう.マニュアルや説明書きを読まなくても,デザインがアフォード(signify)していれば,ユーザである人間はその情報を読み取って正しく取り扱えるのです.(注:Normanはアフォーダンスとシグニファイを区別して使っていますが両者は重なるところもあるので,ここではアフォーダンスという言葉で代表させています.)

確認問題:

 

人間工学

人間の指では押せないほどキーボードが重たかったら,キー同士の感覚が適切でなかったら,人間は操作できません.マウスでクリックするボタンが小さすぎたら,複数のボタンの間隔が適切でなかったら,(特に高齢者や子供は)クリックできません.ドアが重すぎたら(女性や子供や車椅子の人は)開けることができません.それゆえ,操作する人間の身体的な特徴や物理的特性に焦点をあてた「人間工学」の知識が必要になります.以下,例をふたつだけ挙げます.

色のコントラスト比

背景色や背景画像が邪魔をして文字が読みにくいWebサイトに出会ったことはないですか? 高齢になったり弱視であったりすると,この読みにくさが増します.どのような色の組み合わせが良くないのでしょうか? 暗い背景色と明るい文字色明るい背景色と暗い文字色が読みやすくて,明るい背景色と明るい文字色,あるいは暗い背景色と暗い文字色の組み合わせが読みにくいことがわかると思います.つまり,文字色(前景色)と背景色のコントラスト比が十分にないと,文字を読みにくいのです.(極端な場合,白地に白色の文字黒地に黒色の文字は全く読めないですよね.)

Webコンテンツのアクセシビリティ・ガイドライン(WCAG 2.0)では,(明るい方の色の相対輝度+0.05)と(暗い方の色の相対輝度+0.05)の比を4.5対1以上にすることを求めています.PACIELLO GroupのColour Contrast Analyzer(WindowsとMacで利用可能)を使えば,誰でも簡単に前景色と背景色のコントラスト比が十分にあるのか確認できます.みなさんもウェブサイトを作成する時は,このツールを使ってコントラスト比を確認してください.(このツールは,色覚障害の人にどのように見えるかもシミュレートしてくれますよ.)

確認問題:

Fittsの法則

僕は小さなコンピュータが好きなのですが,小さな画面の小さなボタンをタッチペンでクリックするのが,だんだん苦手になってきました.普通のコンピュータの画面でも,ボタンやリンクが小さいとクリックに失敗します.また,遠くにあるメニューをマウスで選択するのは時間がかかるので,個人的にはMac OS Xの画面デザインは余り好きではありません(Mac OS Xでメニューを使うときは,画面を見ずに一気に画面の上端までマウスを持っていけばよいのですが,使い慣れていないので,画面上端に正確に合わせようとしてしまうのです.).Fittsの法則は,画面上で,マウスなどのポインティング・デバイスを使って,もの(ターゲット)を指し示すときにどれくらいの時間がかかるかを予測するモデルです.Fittsの法則では,ターゲットに移動する時間は,「ポインターが今ある位置とターゲットとの距離」と「ターゲットの大きさ」の比に依存することがわかっています.つまり,ターゲットであるボタンが大きければ,ターゲットまでの距離が遠くても,ポインティングする時間は変らないことを予測できます.

Fittsの法則から話がずれますが,下記3種類のリンク群はどれが使いやすいですか?

ユニバーサルデザイン,ユーザビリティ,アクセシビリティ,ユーザ体験,デザイン思考

人間の仕組みの次は,さまざま(多様)なユーザ(健康な成人男子,女性,子供,高齢者,障害者,外国人)に焦点を当てて,ユニバーサルデザイン(なるべく多くの人が使えるようにデザインすること),ユーザビリティ(使いやすさ),アクセシビリティ(高齢者や障害者なども利用できること),ユーザ体験(嬉しい使用体験),デザイン思考(デザイナーの思考法をベースにした問題発見と解決の方法)について紹介します.

ユニバーサルデザイン

Ronald Mace

He coined the term "universal design" to describe the concept of designing all products and the built environment to be aesthetic and usable to the greatest extent possible by everyone, regardless of their age, ability, or status in life.

訳:すべての製品や建物を,年齢や能力や地位に関わらず,できるだけ多くの人にとって,美しくて使いやすく設計すること.

UD7原則
誰にでも公平に使用できること
例:
  • 色々な高さの台に乗せられている公衆電話.大人も子供も車いすの人の利用できる.
  • 公衆トイレの洗面台の鏡.車椅子の人も使えるように高さや角度が簡単に変えられる.
  • 車椅子で入館できるスロープがある建物.
  • 低床バス.
  • エレベータでも利用できる電車の駅.
  • 自動ドア.ドアノブを回す力ドアを押す力がない子供や車椅子の利用者でもドアを開けることができる.
使う上での自由度が高いこと
例:
  • ノートパソコンには片手で蓋をあけることができるものと両手を使わなければ蓋があかないものがある.
  • 右利きでも左利きでも使えるハサミや包丁.
  • 手以外に,口や足で持って字を書くことができる筆記具.
簡単で直感的にわかる使用法となっていること
例:
  • 使い方をアフォードしているデザインならば説明書は不要.
  • パソコンはこの原則の悪例.
必要な情報がすぐ理解できること
例:
  • ホテルの部屋に戻ったら電話機に赤ランプが点滅している.これは何の意味??
  • なぜかMPプレーヤから音が出ない.そもそも電源はONなのかOFFなのか?
  • PCもスマホも使ったことがおじいちゃんにタブレットをプレゼントしました.でもおじいちゃんは,何をどうすればよいかさっぱりわかりませんよね.
うっかりミスや危険につながらないデザインであること
例:
  • 人はミスを犯す生き物なのでミスしても致命的にならないデザインや間違った操作を取り消せるデザインが必要.
  • コンピュータのファイルを消してもゴミ箱に残っているので復元できる.
  • 火事の時,屋上から屋内の階段を降りて避難する時,地下まで下りてしまわないように,1Fから下に行くのを思いとどまるようなデザインになっている.
  • 駅のホームドア.視覚障害者や泥酔者などがホームに転落するのを防止している.
  • 自転車のチェーンカバー.
無理な姿勢や強い力を必要とせず楽に使用できること
例:
  • 重いドア.車椅子の人,子供,女性,高齢者には開けることができない.
  • 調味料の蓋が固くて開けることができない経験はありませんか?
  • 高さを調整できる公衆トイレの洗面台
接近して使えるような寸法・空間となっていること
例:
  • 車椅子でも利用できるお手洗い
  • 車椅子でも利用できるコピー機
  • エレベーターには,車椅子や子供でも届くところにもボタンが設置されている.

UD7原則の例をあげるのに僕は少し苦労しました.同じ例でも複数の原則にあてはまるものがあるし,いろいろな本を読んでみると,本によって各原則のとらえ方がかなり違うことに気がついたからです.そういう意味でUD7原則は標語のようなものだと思います.UDに正確に取り組むためには,『ユニバーサルデザイン実践ガイドライン』(日本人間工学会編,共立出版)のような体系的な(別の言葉で言うと工学的な,つまりモデル化された)手法が必要だと思います.

多様なユーザ

『ユニバーサルデザイン実践ガイドライン』(日本人間工学会編,共立出版)の表I-3-1「ユーザ分類表」では下記のように分類されています.

特別な配慮を必要としないユーザ
健康な成年男子などがここに該当しますね.
感覚機能に配慮すべきユーザ
  • 視覚に頼れないユーザ
  • 視力に配慮すべきユーザ
  • 聴覚に頼れないユーザ
  • 聴力に配慮すべきユーザ
運動機能や体格に配慮すべきユーザ
  • 車椅子利用者
  • 手が使えないユーザ
  • 動作に配慮すべきユーザ
  • 筋力の弱いユーザ
  • 発話に配慮すべきユーザ
  • 左利きユーザ
  • 小さい/大きいユーザ
認知機能に配慮すべきユーザ
  • 初心者/熟練者
  • 理解が苦手なユーザ
  • 日本語・外国語が読めないユーザ
そのほか
デモグラフィック(社会的)や文化的な差異に対して配慮すべき場合

この本の表I-3-1「ユーザ分類表」は,横軸に上記のユーザ分類を並べ,縦軸には,ある製品を利用する際に必要なポイント(原則)を並べています.

製品(ソフト,ハード,システムなど)を利用する際の配慮ポイント

認知心理学でも述べた人間の情報処理システムをベースに考えると,ある製品(ソフト,ハード,システムなど)を利用するためには下記の全てが出来なければなりません.

知覚できるか
例:視覚障害者が視覚以外(聴覚や触覚)で製品が示す情報を知覚できるか?
理解できるか
例:一度に大量の情報を提示されても覚えきれないし,提示された情報が分かりにくかったら理解できません.
使用するための空間や,十分な寸法があるか
例:製品に近づけなかったら,手が届かなかったら利用できません.
操作できるか
例:操作に力が必要だったり,マウスでなければ操作できなかったり,どうしても手を使う必要があったら,その製品を利用できない利用者が生まれてしまいます.
確認問題:

ユーザビリティ

どんなに凝ったデザインの製品でも,使いにくければユーザは利用してくれません.「ユーザ中心の設計思想,人間中心設計(Ucer Centered Design)」に立って,「ユーザビリティ(使いやすさ)」を考えることが重要です.

ISO 9241-11 "Ergonomic requirements for office work with visual display terminals. Part 11: Guidance on Usability"では,ユーザビリティを「ある製品が,指定された利用者によって,指定された利用の状況下で,指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ・効率および満足度の度合い」と定義しています.つまりユーザビリティには,3つの下位概念があるわけです.

原文:Extent to which a product can be used by specified users to achieve specified goals with effectiveness, efficiency and satisfaction in a specified context of use.

また,ヤコブ・ニールセンは,「ユーザビリティの特性」として5点を上げています.

確認問題:

アクセシビリティ

高齢者や障害者をユーザとして考えると,ユーザビリティは必然的に「アクセシビリティ」につながっていきます.

アクセシビリティには明確な定義はありません(注1)が,ユーザの中でも障害者(及び障害を持つ高齢者)に焦点を当て,製品利用の効率や満足度よりも,そもそもその製品を利用できるか(あるいは,どの程度利用できるか)どうかに焦点を当てています.また,障害者は車椅子やスクリーンリーダなどの支援技術を用いていることが多いので,それらの支援技術を使って利用できるか,という点にも焦点を当てています.

(注1:JIS X 8341-1「高齢者・障害者配慮設計指針,パート1:共通指針」ではICT分野のアクセシビリティを「様々な能力を持つ最も幅広い人々に対する製品,サービス,環境または施設(のインタラクティブシステム)のユーザビリティ」と定義している.つまり,ユーザビリティを障害者などにも拡張している.)

『Webアクセシビリティ~ 標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~』の「1章:Webアクセシビリティを理解する」では,下記のようにWebアクセシビリティを説明しています.

Webアクセシビリティとは、基本的には、障害者がWebを利用できることである。もっと具体的にいうと、Webアクセシビリティとは、障害者がWebを知覚し、理解し、ナビゲーション(訳注:広義には、Webサイトのページ間やページ内を移動したり見てまわったりすること)し、インターラクション(訳注:Webに入力したり情報を受け取ったりしてWebを利用)できることである。

障害者がWebを使っている例が,上記の本の「第1章:第1節:Webアクセシビリティとは何か?」に載っています.

『ユニバーサルデザイン実践ガイドライン』の「ユーザ分類表」にあるように,身体障害や知的障害など,様々な障害があります.また,「ユニバーサル・ウェブ」の「障害の分類」では,世界保健機関(WHO)の「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」の詳細な分類を紹介しています.

高齢になると視力や聴力や記憶力が衰えたりして,メガネなどでは補えない機能障害が生じることもあります.このような人々(障害者や高齢者)が,障害を持たない人と同じように製品(情報通信システム)を使えるようにすること,それがアクセシビリティ対応の目的です.視覚機能が衰えたときにWeb利用にどのような問題が生じるか,それを考えて,その問題が生じないようにWebを改善すること,それがアクセシビリティ対応です.

確認問題:

ユーザー体験(UX)

ユーザビリティによって使いやすい製品やサービスができても,ユーザーがそれを選ぶとは限りません.ユーザーが使ってうれしいか,満足するか,そういうユーザーの利用体験が良いことが重要です.そこに注目したのがユーザー体験(User eXperience)で,企業が注目している領域です.後述する ISO 9241-210はユーザー体験を「製品やシステム,サービスの利用した時,および/またはその利用を予想した際に生じる人々の知覚と反応」と定義しています.

デザイン思考

少し視点を変えて,デザイン思考(Design Thinking)を紹介します.デザイン思考とは,デザイナーの思考法を真似て問題を発見しその問題を解決しようという考え方です.『デザインへのまなざし』(早川著,藝術学舎)の「はじめに」で著者は,「では,デザインとはいったい何なのでしょう.(中略)モノを作ろうとする時,または何かコトを起こそうとする時,私たちは頭のなかで構想をめぐらし,イメージを思い描き,必要とあればメモをとり,シミュレーションを行って具体化します.(中略)デザインとは,構想から着地までを通して結果を得るための思考のプロセスそのものなのです.このように私はデザインとは,豊かに生きるために問題解決を行う際の思考術であり,方法論であることをみなさんにご提案したいと思います.」と書いていますが,これがデザイン思考です.著者は24ページに「デザインとは,明確な目的をもって,モノやコトに新しい価値や意味を与える方法なのだ」とも書いています.(皆さんが思っているデザインとは随分違うイメージだと思いますが,僕が言うデザインとは「モノやコト(人工物)に意味を与える」ことです.)

(スタンフォード大学が開講しているd.schoolでは,)デザイン思考は下記5つのステップで構成されます.

  1. 観察・共感(Empasize):ユーザの世界を観察することで人々のニーズを特定し,ときには本人も気づいていないような考え方,ニーズ,問題点を発見します.自分の価値感や先入観を離れて,ユーザの世界に共感することが重要です.フィールドワークが主な手法です.
  2. 問題定義(Define):上記ステップで集めた情報を整理し,行為の裏側にある意味を見出します.それらをもとに,取り組むべき課題を定義します.
  3. 創造(Ideate):思考を発散させるフェーズです.ブレインストーミングなど使って問題解決のアイデアを出します.
  4. プロトタイプ(Prototype):アイデアの試作品(プロトタイプ)を短時間で制作し,目に見て感じられる形でアイデアを具体化します.
  5. テスト(Test):プロトタイプを用いてうまくいくかテストします.

この5段階のステップは1回で終わるのではなく,必要に応じてもとに戻って螺旋のように繰り返します(ラピッドサイクル).また,デザイン思考においては多様な関係者を集めて,お互いの意見やアイデアを出し合い,チームメンバーが同じ想いを共有しながら進めることが大事です.この多様性の中から,イノベーションの起すような新しいアイデアが生まれます.

コミュニケーション,デザイン,人間中心設計の関係

少し話が難しくなりますが,コミュニケーション専攻の入門科目である「人間科学概論IIB」で何故これまで書いたようなことを扱うのかの理論付けを(おおまかに)しておきます.

記号論とコミュニケーション

『記号論への招待』(池上嘉彦,岩波新書) から紹介します.

モールス符号,赤信号,言語,すべて記号の仲間です.人間が意味があると認めるものが記号です.飼い犬に名前をつけるけれど野良犬は名前を持たないのは,自分にとって飼い犬が特別な存在で他の犬と区別する必要があるからです.だから名前という記号を付けます.記号によって未知のものを意味づけることができるようになります.(「ラスムッセンのモデル」で出てきたシグナル,サイン,シンボルも記号です.)

コミュニケーションとは,ある人が思っていることや感じていることなどを他の人に伝えることです.そこでは,その人の思いや考えが「メッセージ」として表現されて他の人に移動(伝達)します.移動する内容は記号(例:言語)で表現されます.メッセージの発信者は英語で喋るのに受信者が英語がわからない人だったらコミュニケーションは成立しません.英語で喋るか日本語で喋るかは「コード」(メッセージを構成する記号とその意味に関する発信者と受信者共通の理解,ルール・文法)の違いです.つまり,発信者はコードに基づいてメッセージを記号化し,受信者に伝達します.しかし人間の会話ではメッセージが不明確であることがあります.そのような場合でも人間は,コミュニケーションが行われている状況「コンテクスト」を使ってメッセージを解読できます.(例:「あれを取って」と言われたときにどれを取ればよいかわかる.)

ユーザビリティの定義に出てくる「指定された利用の状況下で」というのが「コンテクスト」のことです.

デザイン

「デザイン思考」で述べたように,「デザインとは物の意味を与えること」です.デザイナーは,デザインというコードを用いてモノやコトに意味を与えていると言って良いと思います.

利用者が(物事の意味が)わかるように人工物をデザインするという考え方は,人間中心設計の考え方につながります.

人間中心設計

ユニバーサルデザイン,ユーザビリティ,アクセシビリティ,ユーザ体験,デザイン思考に共通するのは人間中心設計(Human-Centered Design)の精神です.『誰のためのデザイン』でも問うているように,人間の生活が豊かになるために,人間を中心に置いてデザインしようという考え方です.ここまで,その一端を説明しました.(1997年発行の ISO 13407「インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス」で定義されています.なお,ISO 13407は2010にISO 9241-210に改定されました.)これ以外に,人間中心設計を実現するための手法などもありますが,授業の範囲を超えるので省略します.

ISO 9241-210は,人間中心デザインプロセスの相互依存関係を図で示しています.人間中心デザインの活動として4つの繰り返し(「利用状況の把握と明示」,「ユーザの要求事項の明示」,「ユーザの要求事項を満たす設計による解決案の作成」,「要求事項に対する設計の評価」)が示されているが,先に述べたデザイン思考の5つのステップと同じことを述べているのがわかると思う.

まとめ

記号論,コミュニケーション,デザイン,人間中心設計に関連があるのがわかったでしょうか.HCI,ユーザビリティ,ユニバーサルデザイン,アクセシビリティ,デザイン思考,情報デザイン,色々な言い方をしますが,共通するのは人間中心設計の考え方です.人間として,一般の人間に焦点を当てるとユーザビリティ,多様な人間に焦点を当てるとユニバーサルデザイン,障害者に焦点を当てるとアクセシビリティになります.人間中心設計のプロセスにイノベーションから焦点を当てるとデザイン思考という言い方が出てきます.ここまでいろいろな話題を書いてきましたが,何らかの共通軸が見えてくれると嬉しいです.

人間編のまとめの宿題

ここまでに学んだことを元にレポートを書いて下さい.(このサイトに書いてあることをコピペして整理しただけのレポートには低い得点を,資料(参考文献)を調べてそれを引用しながら自分の考えを論理的に議論するレポートに高得点を与えます.詳細な評価基準は下記参照.)

シラバスに書いてある到達目標:「情報通信技術を活用して人間を幸せにするというテーマに関して人間科学科で学ぶにはどうすればよいかを各自で計画できる.」

情報通信技術

この章は,技術側の基礎知識を身につけることが目的です.学生生活や今後の生活(トラブルシューティングなど)に役立つように,生活に密着した観点で情報通信技術を取り上げます.キーとなる言葉は「用語集」で説明しました.

おまけ:コンピュータ遣い(ショートカット)

受講生から要望があったショートカットを紹介します.ショートカットとは複数のキーの組み合わせ(例:「CTRL」と「C」を同時に押すとコピーできる)でパソコンを操作する方法のことで,マウスを使わずにキーボードだけで操作できるので速い操作が可能になります.また,視覚障害者やマウスを使えない状況などでコンピュータを操作することも可能になります.

Windowsを例に,特に有用なショートカット(キー操作:機能)を紹介します.

パワーポイントのスライドショー画面で発表している時はタスクバーも表示されないので,他のアプリケーション(ブラウザなど)に切り替えることができなくて困っていませんか? ゼミの4年生でも,スライドショー画面を終了してからブラウザに切り替えて,またパワーポイントに戻ってからスライドショー画面に切り替えている学生がいます.でも,ALT+タブかALT+ESCを使えば,スライドショー画面から一瞬で裏で開いているブラウザに切り替えられますよ.元のスライドショー画面にも一発で戻ります.

セキュリティ(ウイルス対策,プライバシーなど情報の保護)

「情報処理技法(リテラシ)I」でも習ったと思いますが,重要なテーマなので,自分を守り,他人に迷惑をかけないために知っておくべきことをこの授業でも取り上げます.(「情報処理技法(リテラシ)I」のテキスト,IPAの「情報セキュリティ」Trend Microの「インターネット・セキュリティ・ナレッジ」Nortonの「セキュリティセンター」なども参考になると思います.)

まず,学生生活や日常生活で重要性を増す(コンピュータやネットワークを使う上での)セキュリティ(上の脅威)を無線LANとスマートホンに焦点を当てて説明します.

無線LAN

無線LANは,やりとりするデータが電波で送られるので誰でもその電波を受信でき,通信内容を傍受することが出来ます.通信の秘密を守るために無線LANでは送受信データを暗号化したり,利用権利があるユーザだけが利用できるようなアクセス制限を行ったり認証を行ったりする仕組みが定められています.誰でも使える公衆無線LANでは暗号化さえしていないものがあるので注意して利用してください.自宅に設置しているアクセスポイントを他人が不正利用する危険性も認識すること.

特に下記に注意されたし:

SSID,WEP,WPA2,MACアドレスの意味は「用語集」参照.

実習:スマホに無線LAN設定

スマートフォンで大学のDocodemo-Netの「docodemowpa2」を使えるように設定してみましょう.下記にはiPhone(iPadやiPod touchも同じ)とAndroidの例を書きましたが,無線LANとウェブブラウザが使える機器(携帯電話,ゲーム機など)ならば,(1)正しいSSIDとパスワードを設定する,(2)使用開始時にブラウザでLoginページを開いて認証する,を行えばDocodemo-Netを利用できます.(ただし,Docodemo-Netの利用目的は教育や学習に限られていることに注意.ビジネスや遊びに使うと利用規則違反になります.)

docodemowpa2
SSIDは「docodemowpa2」,暗号化(認証)方式はWPA2パーソナル(WPA2-PSK),暗号方式はAESです.本学はセキュリティ上の理由でSSIDを公開していないので自分でこのSSIDを入力する必要があります.WPA2のキーは毎年変わりますので情報処理センターのサイトWPA2キー(学内限定公開)を見てください.情報処理センターは, Windows7, Windows8, Mac OS X, スマートフォンでのWPA2利用の手引き(PDF版)も公開しています.
ログインが必要
Docodemo-Netはログインページで認証手続きが必要です.
iPhoneの設定
Windows7, Windows8, Mac OS X, スマートフォンでのWPA2利用の手引き(PDF版)の38ページ参照.
  1. 名前(ネットワーク名,SSIDのこと):docoedemowpa2
  2. セキュリティ:WPA2
  3. パスワード:上記 学内限定公開のWPA2キー
  4. 詳細:「iOS:Wi-Fi への接続:iPhone、iPad、または iPod touchを無線LAN(Wi-Fiネットワーク)に接続する方法」の「非表示のネットワークに接続する」参照
Androidの設定
  1. ネットワークSSID:docoedemowpa2
  2. セキュリティ:WPA2 PSK
  3. パスワード(ネットワークキー):上記 学内限定公開のWPA2キー
  4. 参考サイト:

スマートホン

ガラケーとか従来型の携帯電話と異なり,スマートフォン(Android,iPhone,Windows Phoneなど)にはセキュリティやプライバシーの点で大きな危険性が潜んでいます.

プライバシー

上記と関係しますが,Gmail,Facebookやスマホを利用する際に取得されている個人情報・プライバシーをどう守るかを考えてみましょう.そもそも,どのような情報がGoogleやFacebookに取得されているか知っていますか? TwitterやFacebookなどのSNSを利用することであなた方はどのような情報を公開しているのでしょうか?

その他

仕組み

インターネットの仕組み

学生生活や日常生活で利用しているインターネット,特にウェブに焦点を当てて,その仕組みの簡単な説明をします.仕組み(理屈)がわかれば,トラブった時に対処しやすくなりますしセキュリティの問題を正しく認識する助けになりますよ.

Q1:インターネット(Internet)とウェブ(WWW,World Wide Web)は同じものですか違うものですか? 違うとしたらどう違うのですか?

配付資料:「インターネット接続の概念図」(学内限定公開,JPEGファイル)

参考:インターネットの詳細は,専攻科目「情報通信ネットワーク1,2」を履修すれば,とっても深く学習できる.:-)

 

World Wide Webの仕組み

インターネットでもっともよく使われるアプリケーションであるWWWの仕組みの基本を簡単に説明します.

電子メールの仕組み

WWWに次いでインターネットで使われるアプリケーションであり,仕事や学業をはじめとする日常生活でも欠かせない電子メールの仕組みの基本を簡単に説明します.

インターネットに接続する方法

自宅パソコンやスマホをインターネットに接続する方法(2011年作成,2016年1月:最新情報に更新)
接続方法 典型的な理論上最大回線速度 必要機材・工事 特徴
アナログ電話 128kbps
  • ノートPCには電話回線用のモデムが内蔵済み.そのモデムポートに電話線をつなげばよい.
  • 常時接続ではない.接続時間に対して課金される.
  • 外出先でも,電話回線さえあれば利用できる.
  • ISP指定の電話番号に電話することでインターネットに接続できる.(ISPは世界中にアクセスポイントを持っている.)
ADSL

最大:下り12Mbps,上り1Mbps

(下り50Mbps,上り5Mbpsのサービスもある)

  • ADSLモデム,スプリッター
  • ADSLモデム(ADSLルータ)から来ているLANケーブルをパソコンにつなげばよい.
  • 電話局の交換局の対応
  • 電話局から遠い(約2km)と回線速度が激減する.
  • 電話回線の引き込み状態が悪いと速度が出ない.
  • 上りの方が下りより速度が遅い.
  • 既存の電話回線を利用できる.
  • 光ファイバーより利用料金が安い(マンションで光ファイバーを共用する場合は光ファイバーも安い).
光ファイバー(FTTH) 100Mbps又は1Gbps
  • メディアコンバータ(業者が用意)
  • LANケーブルをパソコンにつなげばよい.
  • 部屋まで光ファイバかLANケーブルを引き込む工事
  • 上りも下りも同じ速度.
  • 高品質で安定した回線.
  • マンションなどで1本の光ファイバーを共用している場合は個人の回線幅は100Mbpsより遅くなる.
  • 光ファイバーを自宅まで引き込む必要あり.
  • 自宅近くに光ファイバーが来ていない場合は工事ができない.
ケーブルテレビ(CATV) 下り100Mbps
  • ケーブルモデム
  • ケーブルモデムから来ているLANケーブルをパソコンにつなげばよい.
  • ケーブルテレビ業者に申し込めばよいだけ
  • すでにケーブルテレビを利用している場合は,その回線(同軸ケーブル)を使ってインターネットに接続できる.
無線LAN(Wi-Fi) 11Mbps(802.11b),
54Mbps(802.11a,g),
600Mbps(802.11n),
数Gbps(802.11ac)
  • 無線LANカード(ノートPCやスマホなどには内蔵済み)
  • ケーブル不要.
  • 自宅のすぐそばの電柱などにアクセスポイントがある場合に利用できる.
  • 駅,珈琲店,コンビニ,車内などにもアクセスポイントが用意されている.
  • ADSLや光ファイバーなどで接続している場合でも,無線LANのアクセスポイントを自分で用意すれば,自宅で無線LANを利用可能.
  • 2.4GHz(802.11b,802.11g,802.11n)と5GHz(802.11a,802.11n, 802.11ac)があり,5GHzの方が安定して繋がることが多い.
LTE 下り最大150Mbps、
上り最大50Mbps

・スマホは既にLTEをサポートしている.

・Long Time Evolution.現在普及しているW-CDMAやCDMA2000といった第3世代携帯電話 (3G) と将来登場する第4世代携帯電話 (4G) との間の技術.

・複数の周波数帯があり,国やキャリアや端末によってサポートしている帯域が異なることに注意.

WiMAX, WiMAX2+ WiMAX2+:下り最大220(110)Mbps、上り最大10Mbps

・事業者と契約

・PCやスマホ側にWiMAXの通信機能が必要

・Worldwide Interoperability for Microwave Access.無線通信技術の規格.遠距離で利用できる無線LAN的なイメージ.通信は暗号化(AES)されている.

・サービスエリアがまだ限られている

注:bps:bit per second.1秒間に何ビットのデータを送信できるかを示す.1kbps=1000bps,1Mbps=1000kbps,1Gbps=1000Mbps.コミュニケーション専攻ホームページにある日時計の絵のファイル容量は約352kビットだから,アナログモデムの128kbpsでダウンロードすると3秒弱かかるが,光ファイバーの100Mbpsだと一瞬で終わる.Flashや動画はファイル容量がとても大きいので,回線が速くない場合はダウンロードに時間がかかる.

Q2:自宅や下宿先でインターネットに常時接続できますか? 常時接続の場合,どのような方法でインターネットにつながっているか知っていますか? パソコンは有線(LANケーブル,UTPケーブル)でネットワークにつながっていますか?無線LAN(WLAN,Wifi)ですか? 有線接続の場合,そのケーブルがつながっている先は何という機器ですか?

SIMフリースマホの利用

最近,「SIMフリースマホ」の種類が増えてきました.Apple Storeで購入するiPhone,Google Playで購入するNexus以外に,格安スマホが数多く登場しています.SIMフリースマホは,キャリア(NTTドコモ,au,ソフトバンク)と契約しなくても,自分で購入したSIMカードをスマホに挿せば通信できます.海外に行った時はその国のSIMカードを挿して利用することが出来るだけでなく,キャリアと契約する必要がないので,スマホの本体料金を最初に払う以外は,月々の通信料金を払うだけで利用できるので,キャリアのスマホを利用する場合と比較して3年間で半額程度の支払いに抑えることができると言われています.

SIMカードにもいろいろな種類があります.データ通信しかできないもの,データ通信とSMSができるもの,データ通信の他に音声通話もできるものがあり,機能が増えるほど値段が高くなります.また,ドコモの回線を使うSIMカード,auの回線を使うSIMカードなどがあり,スマホとの相性や昨日が異なります.(ドコモの回線を使うSIMを買えば間違いない.)

情報リテラシーのひとつとしての検索技術

世の中にあふれている情報から自分が必要とする情報を探し出し,その信頼性や有用性を判断し,収集し,自分が必要な形に加工し(あるいは適切に引用し),保管・記録し,それを元に情報を発信する,(つまり,探索して学習して発信する),「情報探索プロセス」のリテラシー向上も,大学生の間にしっかり身につけて欲しいスキルです.

情報検索(情報リテラシー)は高校教科「情報」,1年次の必修科目「コンピュータI」や「1年次演習」でも学んでいるはずなので,ここでは検索の際に参考になるポイントをまとめます.

引用における注意事項

引用をする時は以下の条件を満たさなければなりません.

自宅で大学のデータベースを利用する方法

VPN(Virtual Private Network)を使えば,自宅や外出先など学外から,大学で契約している(つまり,学生や教員以外が利用することができない)データベース・電子ジャーナル・電子ブックを利用することができます.詳細は,図書館の「自宅からアクセス WEB-VPN」を見てください.自宅や外出先でもこのページから学内の検索サービスを利用できますので,帰宅したら試してみてください.

パソコン(&スマホ)実習

今年度はこの実習は実施しない

Docodemo-netの設定,OSのアップデート,セキュリティ対策の具体的な方法はPC(スマホ)実習 基礎編参照

さいごに

授業の締めくくりとして,この授業を今後の学業にどうつなげて欲しいかをお話しします.

使いやすい情報通信システム

本学の科目との関連

コミュニケーション専攻のカリキュラムとの関連

人間科学科のカリキュラムとの関連

その他のカリキュラムとの関連

期末試験用復習

シラバスに書いたように,期末試験には基本的な問題しか出題しません.出題範囲は以下ですが,「基本的な問題」がどこに相当するかを押さえながら,最後に復習します.

用語集

この授業で取り上げた用語を,授業で説明した範囲で簡単に説明します.

ルータ
インターネットの中心的機器.あるネットワークと別のネットワークを結びつけており,宛先IPアドレスに基づいて,インターネット上を流れるパケットを,適切なルータに転送する.ADSLや無線LANなどで使う家庭用のブロードバンド・ルータもルータの1種.
(スイッチング)ハブ
ネットワークの中継・分岐器.一本のLANケーブルを複数のLANケーブルに分岐できる.転送データ(フレーム)を選別するなど,インテリジェントな機能を持っている.家電店で購入できる安価なものもある.
LAN(Local Area Network)
会社の支店や本店あるいはそのなかの部署,家庭,大学あるいは学部,学科,研究室など,地理的に限定された範囲で使用するネットワーク.LAN内のホスト(LANに接続されたコンピュータなど)のIPアドレスは共通の性質を持つ.
LANケーブル
インターネット,特にLANで用いるケーブルの総称.現在のLANはイーサネットという技術を用いているので,イーサネットケーブルともいう.LANでは,UTPケーブルと光ファイバーがよく用いられる.UTPケーブルとはUnshielded Twisted-Pairケーブルのことで,2本の銅線を撚ったものを用いている.光ファイバーは,透明なコアの中をLEDやレーザから放射された光が進んでいく.UTPケーブルは家電店でも購入できるし,PCを有線でネットワークにつなぐときには,PCのLANポートとスイッチングハブなどの間をUTPケーブルでつなぐ.
ISP(Internet Service Provider)
インターネットに接続するためのサービスを提供する組織.IIJ,OCN,Yahoo,Biglobe,niftyなどが,ISP企業として,家庭などからADSLや光ファイバーなどの方法でインターネットに接続するためのサービスを提供している.
モデム,ADSLモデム
モデムとは,信号の変調・復調を行う通信機器.電話回線を流れるアナログの音声信号をデジタルな電気信号にmodulateしたり,その逆のde-modulateしたりする.ADSLで使われるものをADSLモデムと呼ぶ.
インターネット(the Internet)
TCP/IPに代表される通信手段を用いて相互接続されたネットワークの集合体.ウェブは,インターネットを利用するアプリケーションの一つであって,インターネットそのものではないことに注意されたい.
パケット
インターネットを流れるデータの単位.ホスト(PC)からインターネットに送信されるデータは,小さな量に切り刻まれた後,パケットという形式の封筒に入れられる.パケットという封筒には送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスが記入されているので,ルータはそのIPアドレスを見て,正しい宛先にパケットを送り届けることができる.パケットを受け取ったホスト(PC)は,パケットの内部に書き込まれている情報を使って,正しい順番に並べ替えて元のデータに復元する.
IPアドレス
インターネットに接続された機器(PC)のネットワーク上のアドレス.同じアドレスは存在しないので,IPアドレスを用いてネットワーク機器を同定できる.実態は,32ビットの2進数.
プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス
IPアドレスには実は2種類あって,世界的に見て同じアドレスが重ならないグローバルアドレスと,LAN内では固有だが世界的にみると同じアドレスが重複していてもよいプライベートアドレスがあります.Webサーバ等のサーバは,インターネットからアクセスできるようにグローバルアドレスが必要ですが,個人で使うPCなどは,PCからインターネット上のサービス(Webやメール)にアクセスする必要はあってもインターネットからPC内のデータを読み出す必要はないし,読みだされたりすると危険なので,プライベートアドレスで十分なのです.ISPと契約して自宅でPCをインターネットにつなぐ場合も,プライベートアドレスが割り当てられます.(プライベートアドレスは,10.0.0.0から10.255.255.255,172.16.0.0から172.32.255.255,192.168.0.0から192.168.255.255です.自分のPCのIPアドレスがこの範囲かどうか確かめてみるのも面白いと思います.)
MACアドレス
各PCやスマホのネットワークアダプター(ケーブル接続口や無線LANなど)毎に決まっている固有の番号.物理アドレスとも言う.実態は48ビットの2進数だが,16進数で 04-A3-43-5F-43-23 のように表記することが多い.
httpとhttps
WebサーバとWebブラウザ(User Agent)はHTTP(HyperText Transfer Protocol)という通信手順でデータをやりとりします.このデータはネットワークを流れるので,第三者がそのデータを盗み見することが可能です.このデータを暗号化することで通信データの安全性を高めるのが,HTTPS (Hypertext Transfer Protocol over Secure Socket Layer) です.Webサーバが本物かどうかの確認(認証),盗聴からデータを守る機能を持っています.Webサイトを使うとき,Webページに,クレジットカードの番号,大事なパスワード,第三者に知られたくない個人情報(電話番号など)を入力するときは,そのサイトがHTTPSで通信しているかどうか確認すること.HTTPで通信している場合,あなたが入力したデータが第三者に漏れたり,偽物のWebサイトにデータを盗まれたりする危険性があります.なお,WebサイトとWebブラウザがHTTPSで通信している場合,多くのWebブラウザは鍵のアイコンを表示しています.
メールで用いるプロトコル(通信手順)
メールソフト(Mail User Agent)が自分のネットワークを担当する送信メールサーバ(自宅近くの郵便局のようなもの)にメールを送る際は,SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)という通信手順を用いる.自ネットワークのメールサーバは,メールアドレスの@の右側を見て,そのネットワークを担当する宛先ネットワークのメールサーバ(相手の家を担当する郵便局のようなもの)に(SMTPという通信手順で)メールを配信する.宛先ネットワークのメールサーバの受信箱(私書箱,あるいは郵便受けのようなもの)に貯まったメールは,POPという通信手順で取りに行かないと,相手のパソコンのメールソフトには取り込まれない.一般に,POPでメールを取り込むと,受信箱のメールは消えて,メールを読んだパソコンにだけメールが残るが,受信箱のメールを消さないように設定することもできる.ただし,どんどんメールがたまってメールがあふれるとエラーになり,それ以上のメールを受信できない.GmailはWebメールなので,POPが省略されていて,Googleの受信箱にたまったメールをWebで直接読むことができる.また,メールソフトがなくても,Gmailで直接メールを書くこともできる.
Webメール
(古典的な)メール利用では,自分のPCのメールソフト(例:OutlookThunderbirdMac OS X Mail)を使ってメールを送受信します.この場合,メールソフト(Mail User Agent,メール・クライアント・ソフトとも言う)にアカウント情報や,使用するSMTPサーバとPOPサーバの情報を設定しなければなりません.Webメールは,自分のPCにメールソフトがなくても,ウェブブラウザで指定されたURLにアクセスするだけで,(アカウント情報を教えてあげる必要はあるけれど)メールを送受信できるサービスです.メールはすべてメールサーバ上に保存されているので,POPで自分のPCに取り込む必要はないし,インターネットにつながっていればどこからでも,PCでも携帯でも,ブラウザさえあればメールを読み書きできます.Gmail(Googleメール)はWebメールの代表例.Webメールであっても,PCのメールソフトを設定すれば,POPなどの方法で自PCにメールを取り込むことも可能なことが多い.
WEP(Wired Equivalent Privacy)
64bit(ユーザが指定する鍵は40bit)或いは124bitの二進数が暗号化の鍵.二進数の代わりにアスキー文字(英数字など)で記入することも出来る.広く普及した方式だがこの暗号を破るのは簡単であることがわかっている.(注:無線LANの規格には認証と暗号化の二つがありますが,ここでは「暗号化」という言葉でこの二つを含めています.)
WPA2(Wi-Fi Protected Access 2)
WPAの改良版.パーソナルモード(PSKモード)と,RADIUSサーバで認証を行うエンタープライズモード(EAPモード)がある.一般(家庭)利用では WPA2-パーソナルとかWPA2-PSKとよばれる方式を使えばよい(WindowsとAndoridで呼び方が違うのでややこしい).
SSID
ESSIDやアクセスポイント名ともよばれる.本学であれば「docodemo」や「docodemowpa2」がSSID.SSIDを指定することでどのアクセスポイントと通信するかを指定できる.SSIDを公開している場合もあれば(セキュリティ向上のため)非公開の場合もある.本学は非公開なので,SSID名を知らない人は接続しようがない.

まとめ


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