1. 渡辺ゼミの内容

【3年次演習説明会で使ったスライド(学内限定公開)】

1.1 渡辺研究室のテーマ

渡辺研究室は「情報デザイン」を旗印に下記のテーマに取り組んでいます.

  • (主に情報通信機器・ソフト・システム・サービスの)ユニバーサルデザイン(なるべく多くの人が使えるようにデザインすること)・ユーザビリティ(使いやすさ)・アクセシビリティ(高齢者や障害者なども利用できること)・UX(User Experience:使ってうれしい体験)デザイン・デザイン思考(イノベーションを生む問題解決型アプローチ)
  • 人間と情報通信システムのユニバーサルなコミュニケーション
  • Web
  • 学生の気づきや発想と渡辺の知識と経験を組み合わせた,社会的価値を生むイノベーション

調査研究手法としては,実験,インタビュー,フィールドワーク,主観評価,質問紙などを組み合わせています.

渡辺ゼミでは上記のテーマに限らず,世の中の問題を解決して人々の生活を向上させようという意欲を持っている学生,熱心で積極的な学生を熱烈歓迎します.

3年次演習ではまず,感性きづきの重要性を指摘し,情報デザインの基礎を主体的に学ぶ活動(勉強)をします.次に,人間活動を生のフィールドで観察し、観察結果を分析・モデル化して新たな発想を生み出し,発想に基づいてプロトタイプを作ってテストするミニプロジェクトを行い,発表してもらいます.これらの取り組みで見つけ出した問題意識が「他者の役に立つ」卒論イノベーションにつながっていくのです.

なべゼミの3年生は,3年次演習と並行して,前期金3限(予定)の「情報処理技法(Webでの情報表現)」も受講してください.2018年度入学の学生向けに開講している「Webデザイン」,「ユニバーサルデザイン(人間中心設計)」,「デザイン思考I,II」,「アプリ作成入門」,「WebプログラミングI,II」も受講するとよいと思います.これらの授業で学んだことを3,4年次演習でも使います.

1.2 Playfulな学び

なべゼミではゼミ生に「Playfulな学び」を提供したいと考えています.(同志社女子大学の上田信行教授がこの学びを提唱されています.)モノゴトに対してワクワクドキドキする学びです.子供時代には誰でもこのような夢中になる学びをしていたはずです.(傍観することなく)取り組んでみて,面白ければ夢中になれます.あの時代の知的好奇心やワクワクドキドキ感を再現しましょう.

そこで大事なのが,「Can I do?」ではなくて「How can I do?」な精神です.「わたしにこれができるかしら」と不安に思うのではなく,「どうすればこれに取り組めるだろうか?」と考えてください.世の中の見方を変える,自分の態度を変える,そういうチャレンジ精神がとても大事です.

Playfulな学びは「主体的で深い学び」(つまり active learning)につながります.講義を聴くだけではなく,自分で体験して,省察(振り返り,Reflection)することで体験を経験に昇華させます.学んだことを,知識ではなく経験として身に着けるのです.

ゼミでは協働を重視します.ゼミ生同士,ゼミ生と渡辺,ゼミと外部の人(研究者,企業の人,障害者,NPO,障害者を支援する人など),とのオープンなコラボレーションを促進させたいと思っています.意見を戦わせるのではなく,自分とは異なる他人の考えを聞いて,なぜそう思うのかを理解し,自分の考えと他人の考えの両方をもとにしたより高次元の考えを作り出していく,そういう協働作業を目指しています.そのためには他人に共感する態度や感性が大事です.自分一人ではできなくても,ゼミ仲間となら,先生や外部の協力者の指導と応援を仰げばできそうな気がしませんか.

なべゼミでは,ものつくりも重視しています.「プロトタイプ」を作って「テスト」します.過去の卒論を見てもらえばわかりますが,Webサイトを作ったり,アプリのプロトタイプを作ったり,日曜大工でゴミ箱を作ったり,3Dプリンタでコップを作ったりしています.自分の考えをアウトプットして見える化してほしいのです.

こうした活動は「イノベーション」を生み出します.イノベーションを生み出す人材こそ企業が求めている人材ですので,就職には困りませんよ.

3年次演習,そして4年次演習では,みなさんがPlayfulに学ぶことができる場,人,道具を用意して待っています.

1.3 ゼミ合宿

3年次の夏休みには,4年生と合同のゼミ合宿を行います.ゼミ合宿は4年生の卒論発表と3,4年生合同のワークショップが中心ですが,バーベキュー,スイカ割り,花火,早朝ランなどの遊びも満載です.

1.4 卒論への取り組み

3年次演習の後半頃から卒論のテーマを考えます.各自3つのアイデアを考えて発表し,全員でブレイン・ストーミングして,そのアイデア(発想)をふくらませていきます.4年生前の春休みから関連研究を調べながら各アイデアを詳細化していき,卒論概要を完成させ,5月末に卒論題目を決定します.5月から7月にかけて予備調査や予備実験を行って,自分で立てた計画がうまくいくかどうかを確かめます.7月のUAI研究会で卒論紹介をしてもらい,他大学の先生方やユーザーの方々からご意見やアイデアをもらいます.4年次夏のゼミ合宿では,卒論概要を発展させる形で卒論の前半を完成させ,具体的な研究手法(実験?,調査?,??)を検討します.8月から10月にかけて必要な実験や調査をして,9月に開催される情報デザイン/Xデザインフォーラムや11月上旬に開催されるUAI研究会で卒論中間発表をします.11月下旬に卒論内部〆切を設けていて,提出された卒論を渡辺が添削します.添削を反映して提出版の卒論を完成させ,12月上旬に卒論提出になります.

2. 過去の卒論紹介

なべゼミのこれまでの主な卒論の概要を紹介します.毎年,卒論の一部を学会発表しています.

2.1 2017年度の卒論

LINEスタンプの適切な代替表現-タグの有効性及び異なるコンテキストでの有効性の確認-
LINEスタンプは、視覚障害者が音声読み上げ機能を使用しても、スタンプに適切な代替表現が付与されていないためにスタンプの部分は「スタンプ」もしくは「ボタン」としか読み上げられないという問題がある。そこで本研究は,視覚障害者が晴眼者と同じようにLINEスタンプを使えるようになるための適切な代替表現を検討した。本研究では、意味・感情の伝達においてのタグ(サジェスト機能用にスタンプに付与されている文字)の有効性を明らかにすることと、異なるコンテキストでのタグの有効性を明らかにすることを目的として実験を行った。その結果,「了解・同意」「感謝」「お願い」「喜び」のスタンプはタグの意味・感情伝達度のほうが記述化した音声よりも高く、「悲しみ」「怒り」のスタンプは記述化した音声のほうがタグよりも意味・感情伝達度が高かった。「不安」のスタンプに関しては明確な結果が出なかった。実験2-bでは、「照れる・ごめん」のタグが付与されたスタンプでは、「照れる」において肯定的感情に有意差が見られ、感情が伝わったことが確認できた。「了解・頑張れ」のタグが付与されたスタンプでは、どちらも肯定的感情に有意差が見られた。
聴覚障害者対応の映画字幕-音が聞こえない状況でのBGMの字幕化-
本研究の目的は、聴覚障害者や難聴者がより映画を楽しめる日本語字幕の普及を促すために、音楽の字幕化を提案し、検証することである。BGMの字幕化に顔アイコンを用いることで内容の理解の手助けになるのかどうかを確かめるために、BGMの雰囲気を記述化した字幕と比較実験を行うことで検証した。質問紙の結果より、健聴者、聴覚障害者ともに、BGMの雰囲気を提案手法で字幕化することで、内容の理解の手助けになることが明らかとなった。インタビュー結果より、聴覚障害者にとってはこのような字幕は初めてだが、必要とされていることがわかった。健聴者実験では、質問紙の結果より、BGMの字幕化に顔アイコンを用いることで、内容の理解の手助けになることが明らかとなった。しかし聴覚障害者への質問紙とインタビュー結果では、BGMの字幕化に記述化字幕を用いることで内容の理解の手助けになることが明らかとなった。本卒論は,電子情報通信学会・福祉情報工学研究会で学会発表されました.
ウェブ利用における聴覚障碍者の認知特性~健聴者と聴覚障碍者に読みやすい文字サイズの比較~
ウェブの普及が進む現代において、視覚情報を主な情報源とする聴覚障碍者にとって、ウェブは本当に使いやすいのか、と疑問を感じたことが本研究のきっかけであった。この論文では、ウェブサイト上における文字サイズに焦点をあて、(1)健聴者、聴覚障碍者ごとの最適値、(2)最適値の読みやすさが健聴者と聴覚障碍者で異なるのか、(3)最適値が健聴者と聴覚障碍者で異なるのか、(4)最適値がブラウザのデフォルト値と異なるのか、(5)最適値から上下に離れたときの読みやすさの劣化が健聴者と聴覚障碍者で異なるのか、を実験により検証した。その結果,健聴者・聴覚障碍者ともに、文字サイズの最適値は刺激5(27px)であった。これはブラウザのデフォルト値である16pxより大きい。最適値の読みやすさの評価は、ほぼ同じであった。最適値から上下に離れたときの読みやすさの劣化において、両者の間に有意な差はみられなかった。聴覚障碍者は、文字サイズが大きくなるにつれて読み終える時間が早くなり、因子1(読みの効率)が上がり続けた。問題に回答する時間は、小さい文字サイズと大きい文字サイズにおいて比較的長い時間を要した。これは、生田目・北島の先行研究で明らかとされた、健聴者と比較してテキスト情報を理解するレベルが浅く、戦略的な視線運動が苦手であるということに繋がっている可能性がある。本研究は,電子情報通信学会・福祉情報工学研究会で学会発表されました.
継続可能な食事トレーニングのUX(ユーザー体験)デザイン
本研究の目的は、継続可能な食事トレーニングアプリのプロトタイプをUXデザインの手法で制作して評価することで、UXデザインの有効性を確かめることである。競技ダンス部員が継続可能な食事トレーニングのアプリのプロトタイプを制作するために、UXデザインプロセスにしたがって、1)フォトエッセイの作成、2)フォトエッセイを元にインタビューをしてKAカードを作成しニーズを抽出、3)上位下位関係分析、4)上位下位関係分析から競技ダンス部員を5パターンに分類し、それぞれの特徴をもつ5体のペルソナを作成し、筋肉を増強したい筋肉増男を主要ペルソナと決定、5)構造化シナリオ法を使用して主要ペルソナのバリューシナリオ、アクティビティシナリオを作成、6)構造化シナリオ法で作成したシナリオに沿ってペーパープロトタイプを作成、7)筋肉増男タイプ6名にインタビューしてペーパープロトタイプを改善した。最後に8)Webアンケートを行って、SUSスコアと食トレスコアを基に、作成したプロトタイプアプリを評価した。その結果,筋肉増男と他のペルソナとのSUSスコア、食トレスコアを比べたところ、5%水準で有意差はでなかった。その結果、主要ペルソナである筋肉増男はその他のペルソナよりアプリの評価が有意に高くなるはずという仮説は否定された。しかし、ラテンはモダンより5%水準で有意にスコアが高くなった。主要ペルソナをターゲットにデザインしたにも関わらず主要ペルソナに有意に有効でなかった結果からUXデザインの有効性は確認できなかったが、ペルソナを作成したことにより、人間中心デザインの軸から外れずにデザインすることができた。
タッチペンを用いた手書き文字入力の有効性―講義における「アナログ手書き」と「デジタル手書き」の比較―
紙の手書きとタブレットのペンでの手書きを比較することで、デジタル手書きの有効性を示すことと、デジタル手書きの楽しさを広めることが本研究の目的である。「講義ノートはアナログ(紙)手書きよりもデジタル(タブレット)手書きでとった方が有効性がある」という仮説を立てた。本研究では、(1)理解度が高い、(2)満足度が高い、(3)共有がしやすい、(4)網羅できている、という4点を講義ノートにおいての有効性と定義づけた。被験者にデジタル手書きとアナログ手書きの両方で講義ノートをとらせる実験を行い、両者の有効性を比較した。予め撮影した講義動画を実験者のノートPCで再生して被験者に講義を受けさせ、アナログ手書きとデジタル手書きでノートを取らせた。その結果,理解度の点では、アナログ手書きで講義ノートを取る場合とデジタル手書きで講義ノートを取る場合では有意な差が認められなかった。満足度の点でも、質問紙全体では、アナログ手書きで講義ノートを取る場合とデジタル手書きで講義ノートを取る場合で有意な差は認められなかった。しかし、因子分析を行いアナログ手書きとデジタル手書きの因子得点を比較すると、アナログ手書きでは「操作の分かりやすさ」において得点が高く、「手軽さ」、「身体的負担のなさ」においては得点が低い一方で、デジタル手書きでは「手軽さ」、「身体的負担のなさ」においては得点が高く、「操作の分かりやすさ」においては得点が低かった。共有のしやすさという点では、質問紙全体でデジタル手書きの点数の方が高いという有意な差が認められた。網羅率の点では、網羅率を測るスライド全体でアナログ手書きの網羅率が37.7%、デジタル手書きの網羅率が69.8%となり、デジタル手書きの網羅率の方が高いという有意な差が認められた。「デジタル手書きの楽しさを広める」目的については、実験中や実験後に多くの被験者から「楽しい」「タブレットが欲しくなった」といった意見が上がっていたことから、十分に広めることができたと考える。
視覚障害者向けコップのデザイン―3Dプリンタで製作した、音の変化で水量が分かるコップ―
視覚障害者にインタビュー調査を行ったところ、コップに液体を注ぐ際に液面の深さを判断するために、コップの内側に指を当てて注いでいることやこぼれないように注意しながら注いでいるなど、苦労があることが分かった。そこで本研究では、液体をコップに注ぐ際の音の変化に着目し、視覚障害者でも段階ごとに液面の深さを判断できるように工夫したデザインのコップを複数製作した。視覚障害者を被験者として、音の変化が顕著なコップのデザインを実験で探ることを研究目的とした。最終的に3Dプリンタで、音の変化に特徴があるように製作したコップ7つを用意し、視覚障害者3名を被験者として実験を行った。コップに対し、音声分析で音の変化がある部分の容量と、視覚障害者が音の変化があると示した容量の誤差を測定した。事前にコップ全体の音の変化の特徴を把握してもらうため、被験者にはコップの全体を触ってもらい、調査者が各コップにつき5回入れ始めから満水になるまで注いだ。その後、慣れの効果と誤差を減らすためコップ一つにつき、5回ずつ注いでもらった。一定の速度で液体を注げるようにジャグを使用し、水量の重さの変化などの影響をなくすためコップは机に置くように条件を統一した。その結果,コップごとに被験者の得意不得意があり個人差があったが、3Dプリンタで製作したコップは液面の深さを判断でき、目的を満たすコップをデザインできた。卒論終了後,このアイデアを基にした蓋をデザインし,特許申請しました.さらに製品化を目指して,工業デザイナー,製造業者との打ち合わせを継続しています.

2.2 2016年度の卒論

音声を用いた歩行者ナビゲーション
歩きスマホをなくすために,音声でナビゲーションするために必要な要素を調べました.(2015年度卒論の改良版です.)良い案内文の構成要素や条件を関連研究で調べて,そのポイントを踏まえた音声案内文を作成し,Google Mapと本手法を比較するために,街で被験者実験を行いました.その結果,良い音声ナビゲーションの条件として,「わかりやすさ」「安心感」「ストレス(のなさ)」が必要なことがわかりました.
手書き文字入力の有効性
スマホの手書き入力の性能が向上しているので,特に高齢者において手書き文字入力が有効なのではないかという仮設を立て,実験で検証しました.女子大生と高齢者を対象に実験を行い,普段の入力方法(例:フリック入力)と,Mazecという手書き文字入力アプリを用いた方法の比較を,入力時間・エラー数・達成得点・ユーザビリティ質問紙で比較しました.その結果,統計的に優位な結果は出ませんでいた.高齢者は個人差がとても大きく,また文字入力の考え方が人によって違うので,何をもって手書き文字入力の方が有効かというのかが難しいことがわかりました.でも,高齢者が手書き文字入力を楽しんでいることもわかり,普段の文字入力を使いこなせていない人や楽しく文字入力をしたい人には,手書き文字入力が有効であることがわかりました.
電子媒体を用いたスケジュール管理
紙のスケジュール帳とスケジュール管理アプリの長所と短所をアンケートや被験者実験から調べ,自分たち女子大生が使いたくなるような,アレンジしやすいスケジュール管理アプリを提案しました.紙のスケジュール帳を使用しているユーザーの電子媒体への抵抗意識や手書きアプリケーションへの抵抗意識が解消されていない反面,スケジュール管理アプリケーションへの関心が高いこともわかったので,今後のスケジュール管理アプリケーションの改良が重要であることにも気づきました.
ゴミを捨てたくなるゴミ箱のデザイン
どのようなデザインならばゴミを捨てたくなるのか.今回はゲームに注目しました.大きなゴミ箱を木材で製作し,そこにテレビ画面を組み込みました.ゴミを捨てるとゲームがスタートするように設定し,ゴミを捨てたくなるゲームの要素を調べました.ゲームはScratchで作成しました.聴覚や視覚を刺激するゲーム,みんなが良く知っているゲームなど,わかりやすさが重要であることがわかりました.
LINEスタンプの適切な代替表現
視覚障害者はLINEスタンプを利用できません. では,どのような代替表現ならば視覚障害者も晴眼者と同じようにLINEスタンプを利用できるのかを調べてました.2014年度卒論の発展版です.LINEスタンプを「記述化」し,各スタンプにオノマトペか効果音か曲を加え,どれが最も効果的か,晴眼者の目隠し条件と視覚障害者の実験で調べました.その結果,記述化した音声にオノマトペを加えたスタンプが最も効果的であることがわかりました.この結果は電子情報通信学会の福祉情報工学研究会で学会発表し,卒論完成後,LINEの担当者にも報告しました.この卒論で作成した代替表現(実験で使用した音声)は「LINEスタンプの適切な代替表現」 補助資料で公開しています.

2.3 2015年度の卒論

初心者に適したレシピ提示
タブレットが普及した現代社会で初心者が料理をつくる際,どのようなレシピサイトが使いやすいのでしょうか.本研究では,理解度が高まり満足感が得られるレシピの提示方法として音声ガイドと動画に注目し,実際に料理を作ってもらう実験もして,どの方法が効果があるのかを確かめました.沖縄で開催された電子情報通信学会で発表しました.
音声を用いた歩行者ナビゲーション
晴眼の歩行者を対象にした研究です.歩きながらスマホを見るのは危険なので,音声だけでナビゲーションをしたいと考えました.考案した音声案内を元に被験者に街を歩いてもらい,提案手法の有効性を確かめました.
ユーザのニーズに合わせた情報検索システムの有効性-車いすユーザの外出時におけるバリアの解消を目的とした飲食店検索システム
車いすユーザのニーズに注目しました.彼/彼女たちが外出する際,一番の問題になるのは目的地の飲食店などが利用できるかどうかだということが調査の結果わかりました.そこで,吉祥寺の飲食店を実施調査し,ユーザのニーズに応じて目的にあった飲食店を検索できるシステムを構築し,その有効性を評価しました.電子情報通信学会で発表しました.評価実験用サイトを公開しています.
ウェブサイトの高級感とユーザビリティ
高級感を感じる(ブランドの)Webサイトとそのサイトの使いやすさ(ユーザビリティ)にはどのような関係があるのでしょうか.幾つかの業界から代表的なサイトを取り上げ,それぞれの高級感とユーザビリティを測定しました.その結果から,高級感とユーザビリティが両立するサイトが備えるべき要素を探り出しました.
タッチパネルに適したリンクの操作
マウスが使えないタッチパッドは使いにくくないですか.特にフラットデザイン全盛の今,どれがリンクやボタンでどれは単なる画像かわからなくて困ったことはありませんか.この研究はこの問題点を解決するために新しい操作方法を考案しました.3週間に渡る被験者実験を実施して,提案手法が有効であることを確かめました.INTERACTION2016で発表しました.実験に用いたサイトを公開しています.
電子雑誌の効率的な内容把握
紙の雑誌と電子雑誌を比較した場合,どちらが使いやすいですか.電子雑誌をもっと使いやすくするにはどうすればよいのでしょうか.この研究は電子雑誌ならではの機能を考え,それを実装した電子雑誌の有効性を被験者実験で確かめました.
電子書籍のユーザビリティ向上
電子書籍も紙の書籍のようにパラパラ読みしたくないですか.購入する前に紙の書籍を立ち読みするように電子書籍を立ち読みしたくないですか.この研究は,電子書籍を購入する前の立ち読み機能を幾つか提案し,その有効性を被験者実験で確かめました.

2.4 2014年度の卒論

合成音声による解説付き映画ガイドの比較評価
福祉情報工学研究会で学会発表した研究です.視覚障害者が映画を鑑賞する際に音声ガイドというサービスがあります.人間がガイドするのは時間もかかりますしナレータが必要です.そこで合成音声による音声ガイドを作成すれば良いのではないかと考え,実際に音声ガイドを作成して被験者実験をして有効性を確かめました.
ユーザーのニーズに合わせた情報検索システムの有効性-女子大生を対象とした新宿駅周辺トイレ情報における検索方法の研究
インターラクション2015で発表した研究です.女子大生のトイレ利用は用をたすことだけが目的ではないですよね.お化粧,ライブの着替えなど多用な目的があると思います.そこで実施に新宿駅付近のトイレ100件余を調査し,目的にあったトイレを瞬時に検索できるシステム"BelleLavano"を制作しました.BelleLavanoは一般公開しています
LINEスタンプのアクセシビリティ向上-LINEスタンプを言語化した音声と効果音化した音声の比較
LINEではスタンプを頻繁に用います.しかし視覚障害者はスタンプを利用することが出来ません.そこでいろいろなスタンプにどのような代替情報を付与すれば各スタンプの意味を的確に示すことができるのかを調べ,被験者実験を行いました.
合成音声を用いた文書理解の評価 -音声読み上げにおける強調表現の効果
紙の文章ならば太文字や赤色で示される強調表現を音声ではどう表現するのが良いのでしょうか.大きな声? 太い声? ピーと音を入れる? この実験ではどのような音声表現が協調を示すのかを被験者実験によって確かめました.
フラットデザインを用いたウェブデザインのユーザビリティ-ピクセル立体によるウェブサイトのユーザビリティ
ンターラクション2015で発表した研究です.フラットデザインの要素は操作対象であることをsignifyしないので,どれがリンクでどれがボタンでどれは単なる画像や文字なのかがわかりません.そこでタップできる要素の背景画像のデザインを工夫することを考えました.被験者実験を行った結果,提案手法の有効性が確かめられました.
スマートフォンにおけるアイズフリーな片手文字入力システムの研究
スマートフォンで画面を見ずに文字入力する方法に注目した研究です.すでに学会発表されていた手法に注目し,それを改善することで使いやすさを向上させることを試みました.被験者実験の結果,有効性が認められました.
バスアプリの使いやすさ評価
スマホのバスアプリはいろいろありますが,どれも不十分なところがあります.そこで既存のアプリを調査するなどの方法で,バスアプリが備えるべき特徴を調べました.
スマートフォン用アプリにおけるユーザビリティとアクセシビリティの評価-Webアプリとネイティブアプリの比較
スマートフォンのWebアプリとネイティブアプリの違いを調べました.

2.5 2010年度から2013年度の卒論

2.6 2009年度の卒論

ライブイベントの情報保障 -初心者によるパソコン要約筆記-
聴覚障害者が授業やセミナーや会議に参加するとき,手話や要約筆記などによって,音声情報を保障する必要がある.この卒論は,社内会議のように,専門の手話通訳や要約筆記者を雇うことが出来ないような場面を想定して,同僚などがパソコンを使って要約筆記をする場面に注目した.その結果,会議で話される言葉を2倍に圧縮しないとパソコンに打ち込んで文字化できないことがわかった.
携帯電話用サイトのアクセシビリティとユーザビリティ
携帯電話用に制作された都道府県の携帯サイトのユーザビリティとアクセシビリティを調査
スクリーンリーダを用いたWebアクセシビリティ評価 -NVDA操作ガイドの制作と,Web制作者によるアクセシビリティ評価実験-
オープンソースで公開されているスクリーンリーダNVDA日本語版を用いてWeb制作者がJIS X 8341-3:2010に対応したサイトを制作できるかを調査.スクリーンリーダで評価可能と思われるJISの達成基準を取り上げ,本物のWeb製作者にNVDAを使ったアクセシビリティ評価を依頼した.卒論用に制作した「NVDA日本語版操作ガイド」はウェブで一般公開されている.力作の卒論です.
高等学校における情報教育 -普通教科「情報」の授業の現状-
学校や年度によって情報の授業で学習した内容が異なるかどうかを調べるために,本学科の1年生と3年生を対象にした質問紙調査を行った.
ハザードマップのカラーユニバーサルデザイン
地震被害などを示すハザードマップが色覚障害者にも使えることが大事である.そこで,色覚障害者にも利用できて危険度もわかりやすいハザードマップの色の使い方を調べた.
有効な音声CAPTCHA -削除法と混合法の比較-
東大の西本さんとの共同研究.ソフトが破りにくく人間には聞きやすい音声CAPTCHAの手法として削除法を提案し,被験者実験でその有効性を調べた.

2.7 2008年度の卒論

色弱者が感じるカラーユニバーサルデザイン
大学のWebサイトの前景色と背景色の組み合わせに注目
動的なWebのアクセシビリティ
Ajaxを始めとする動的なWebサイトの実例を集め,WAI-ARIAがどのように適用できるかを検証
中学生とインターネット
中学生の生活をインターネットがどうenhanceできるかを検討
高齢者にとって使いやすいWeb
一枚のページに全情報が書いてあるサイトと,情報の構造に沿って複数のページに別れているサイトのどちらが使いやすいかを,高齢者22名と女子大学生22名対象に実験を行った.
ウェブのユーザ体験
写真やイラストがWebの楽しさに及ぼす影響を調べた
ウェブの構造
レイアウトテーブルで情報を詰め込んだサイトと,div要素でブロックに区切り,関連する情報をリスト要素でマークアップしたサイトを視覚障害者を被験者にして比較
視覚障害用早口合成音声の研究
昨年度の卒論の続編.単語親密度との関係等を研究
有効な音声CAPTCHA
音声CAPTCHAの新しい手法の有効性などを研究
わかりやすい音声ガイド
どのような音声ガイドがわかりやすいかを研究

2.8 2007年度の卒論

代表的なものを紹介する.

映画の音声ガイド-初心者用ライブ音声ガイドマニュアルの制作と評価-
視覚障碍者は映画を見る際、映像が見えないことや字幕を読めないことが障碍となり、映画を心から楽しむことが出来ない。視覚障碍者が映画を楽しむために、登場人物の特徴や情景など目で見る情報を言葉で説明することを「音声ガイド」という。しかし、上映中の映画を解説するライブの音声ガイドは、初心者には敬遠され視覚障碍者の需要に対し、ガイド者の数が少ない。そこで、「ライブ音声ガイドのマニュアル」があれば、ライブ音声ガイドに挑戦しやすくなるのではないかと考え、「初心者のためのライブ音声ガイドマニュアル」を制作した。本研究の目的は、インタビューや実験を基に、「ライブ音声ガイドマニュアル」を作ること。さらに、そのマニュアルの有効性を客観的に確かめることである。
JavaScriptを利用した動的なWebのアクセシビリティ-Googleのケーススタディ-
最近はやりのAjax(Google MapやGMailのような,アプリケーションのように使えるウェブサイト)のアクセシビリティに取り組んだ研究.Google DocumentとiGoogleに注目し,音声ブラウザを利用するユーザにとってどのような問題があるのかを調べ,重要なポイントを明らかにした.
パワーポイントのカラーユニバーサルデザイン
色覚障害があるユーザにも使える「かわいい」パワーポイントのデザインを研究.
ウェブのユーザ体験-映画モバイルサイトのユーザビリティと楽しさ-
昨年度に続く卒論.携帯用のサイトに注目し,ユーザビリティと楽しさの関係を明らかにした.

2.9 2006年度の卒論

画像を音声でわかりやすく伝える工夫
視覚障害者,あるいは運転中や真っ暗闇にいる晴眼者に,どのような点に注意して画像を説明するのがわかりやすいのかを調べる研究.いろいろな写真を用意し,それにいろいろな説明を付け,各画像の説明毎に,こちらが用意した質問に答えてもらうことで,「わかりやすさ」を構成する要因を重回帰分析により調べた.
ウェブサイト作成ツールのアクセシビリティ機能
昨年の卒論に続く研究.今年は,一般向けに普及しているオーサリングツール,IBMのホームページ・ビルダーに焦点を当て,総務省の「公共サイト運用モデル」に沿ったアクセシブルなWebサイトを構築する方法を検討し,IBMのホームページ・ビルダー開発グループに改善案を提案した.
視覚障害者用早口合成音声の研究
昨年の卒論に続く研究.今年は高齢者に焦点を当て,高齢者でも慣れは生じるのか,どの程度の早口まで聞き取れるのか,女子大生と差があるのか,などを調べた.高齢者13名に週1回4週連続大学に来てもらって実験した.
ウェブのユーザ体験
楽しいウェブとはどういうウェブかに興味を持った研究.Flashや写真があるウェブとそうでないウェブで,ユーザビリティと利用者の楽しさの関連や,サイト毎の差とその要因を被験者による評価で調べ,Flashが楽しさに関連すること,しかしFlashを使ったサイトのユーザビリティは高くないことを明らかにした.
ウェブの構造化
見出し要素などで正しく構造化したウェブは,晴眼者のユーザビリティや視覚障害者のアクセシビリティを向上させるかどうかを客観的に調べた研究.自分でテスト用のウェブサイトを用意して,いろいろな工夫を重ねながら実験.この卒論を発展させたものを渡辺が国際会議で発表し,最優秀論文賞をとりました.
情報機器と人間の音声対話(2名のグループ研究)
昨年の卒論に続く研究.視覚障害者と対面朗読者の対話を分析し,それを元にXHTML版のお弁当注文システムをPHPとPostgreSQLで作成し,視覚障害者による評価実験を行った.音声対話と比較したWebページ遷移システムの有利さや,候補や絞り込みなどの特徴の有効性が分かった.
ウェブサイトのユーザビリティ
昨年度の卒論に続いて学科サイトのユーザビリティを調べ,改善案を出した.
地方自治体ウェブサイトの現状
自治体などの公共サイトはウェブコンテンツ・アクセシビリティガイドラインJIS X 8341-3に準拠している必要がある.本当に準拠しているのか,JISのどの部分が準拠していないのか,自治体の規模による差はあるかなどを,テストツールで比較した.

2.10 2005年度の卒論

高等教育におけるeラーニングの現状と今後の展開
コミュニケーション学科の「情報通信ネットワーク1,2」は,シスコ・ネットワーキングアカデミーというeラーニングシステムを使っています.この卒論は,高等教育におけるeラーニングの国内外の現状を調べ,シスコ・ネットワーキングアカデミーの受講者の調査を元に,eラーニングの普及に必要な要素を調べました.
視覚障害者用早口合成音声の研究
耳で聞く方が目で読むより時間がかかるので,早口で音声合成してくれないとコンピュータの音声利用に時間がかかってしまいます.そこで渡辺研究室では,早口でも聞き取りやすい合成音声に関して科研費の共同プロジェクトを行っています.この卒論は,この共同研究の一部として,早口でも慣れれば聞き取れるようになるのかについて,被験者実験を元に調べました.
コンピュータと視覚障害者の音声対話に向けて
今は,コンピュータの前に座ってキーボードを叩き,画面に表示される情報を目で読み取らなければコンピュータを利用できません.しかし,コンピュータと人間が音声対話できるようになれば,人間がコンピュータの前に座る必要はなくなります.そこで,渡辺研究室では,視覚障害者とコンピュータの音声対話に焦点を当てた共同研究を科研費で実施しています.この卒論は,対面朗読者(視覚障害者に本を読み上げるサービスなどをする専門家)と視覚障害者が,ケータリングメニューを元に食事を注文する際の対話を分析し,音声対話に必要な構造と要件を調べました.
日本におけるウェブ・ユーザエージェントの問題点
視覚障害者用のウェブ音声化ソフト(ユーザ・エージェント)の機能はまちまちです.しかし,ユーザ・エージェントの機能がそろっていないと,ウェブを作る側はどれに合わせればよいかわからないので困ってしまいます.そこで渡辺研究室では,「日本の視覚障害者用ユーザ・エージェントの機能調査」を,ウェブ・アクセシビリティの専門家たちと共同研究しました.この卒論はその一部で,視覚障害者の間でもっともよく使われているIBMのホームページ・リーダの機能を詳細に調べて,問題点と今後の方向性を提言しました.
コミュニケーション学科ウェブサイトのユーザビリティ
学科サイト・リニューアルプロジェクトの続きを卒論にまとめた研究です.新旧学科サイトのユーザビリティ・テストを実施し,どこが改善されたかとか,どんな問題が残っているかを調査しました.この卒論の成果は,学科サイトの改善に活用されます.
音声によるわかりやすい情報伝達
ラジオとテレビのスポーツ実況中継を競馬,サッカー,野球で比較し,画面が見えないラジオのアナウンサーがどのような工夫をしているかを調査した研究です.
ウェブサイト作成ツールのアクセシビリティ機能
「ユニバーサル・ウェブ -誰もが使いやすいWebサイトの構築-」を読めばわかると思いますが,エディタを使って手でウェブページを作るのは労力がかかるだけでなく,標準仕様に沿わない間違ったウェブページを作ってしまいがちです.しかし,オーサリングツール(ウェブサイト作成ツール)の助けを借りれば,そのような問題はなくなります.また,オーサリングツールがアクセシビリティに優れたウェブページを作ってくれるなら,世の中のウェブページはアクセシビリティに配慮した物になるでしょう.この卒業研究は,オーサリングツールのアクセシビリティ(支援)機能を詳細に調べた後,さらに,オーサリングツールのユーザはその機能を使っているのか,使わない理由,どういう機能がわかりやすいか,について,インタビュー調査しました.

3. Q&A

3.1 よくある質問とその答え

コンピュータが得意でないと渡辺ゼミでやっていけないのか?
そういうことはありません.それに,今は得意でなくても,渡辺ゼミにいる間に得意になると思います.ただし,コンピュータが好きなほうが卒論の選択肢が広くなるし,より深く卒論のテーマを追えると思います.つまり,コンピュータが得意なことは必要条件ではありませんが,得意なことがプラスになります.実際,今のゼミ生の中には,情報系の授業を取っていなかった学生も多数いますが,全く遜色ありません.
なお,卒論では,実験に使うシステムのプログラミングや音声合成の技術的なことは私や私の共同研究者が担当し,学生の皆さんには,その技術をどう使うかや,使い勝手や有効性の評価をしてもらうという役割分担ができると思います.皆さんは,おもしろいアイデアを出し(デザインし),「技術をどう使うか」という観点で卒論に取り組んでくださればよいと思います.
渡辺ゼミは難しいことをやっていそうなので,私には無理ではないか.
4年生があちこちで研究発表しているのを見ると,なんて難しいことをやっているのだろうと思うかも知れません.でも彼女たちも2年前までは皆さん同様に難しいことは何も知らない学生でした.やる気を持って卒論に取り組んだ結果,ここまで来たのです.皆さんも,是非,後に続いてください.
広告など他の分野をやりたくてコミュニケーション専攻に入ったけど渡辺ゼミにも興味がある.
上記の卒論テーマを見ればわかるように,広告を題材にしていても,ウェブやモバイルや音声といったテーマの卒論を考えることが可能です.むしろ,そういうテーマを渡辺ゼミ的にどう調理するかがおもしろいところだと思います.
絶対にXXXをしたい.
えーと,今考えているテーマが卒論のテーマになる可能性は低いと思います.皆さんは未だ背景知識が乏しいですから,3年生でいろいろ経験する間に,卒論のテーマはかなり変わるだろうと思います.
いつごろ卒論のテーマを決めるのか?
3年生の間は,渡辺ゼミに関連することをいろいろ経験して欲しいと思っています.3年次終わりの12月頃から,卒論のテーマを考え始めます.