1. 渡辺ゼミの内容
1.1 渡辺研究室のテーマ
渡辺研究室は,「人間と情報通信システムのユニバーサルなコミュニケーション」を旗印に,下記のテーマに取り組んでいます.
- 情報通信機器・ソフト・システム・サービスのユニバーサルデザイン(なるべく多くの人が使えるようにデザインすること)・ユーザビリティ(使いやすさ)・アクセシビリティ(高齢者や障害者なども利用できること)
- スマホ時代のモバイル利用
- Webやスマホの音声やアイズフリーでの利用(スマホやWebを見なくても利用できること)
- 情報デザイン
調査研究手法としては,実験,インタビュー,フィールドワーク,主観評価,質問紙などを組み合わせています.
渡辺ゼミでは,上記のテーマに限らず,世の中の問題を解決して人々の生活を向上させようという意欲を持っている学生,熱心で積極的な学生を熱烈歓迎します.
3年次演習ではまず,この分野の基礎知識と研究方法を学びます.次に実践的学習として,人間活動を生のフィールドで観察すること(フィールドワーク),観察した結果を整理しそこから新たな発想を生み出すこと(デザイン),発想したことに基づいてプロトタイプを作るミニプロジェクトを行い,最後に発表してもらう予定です.
なべゼミの3年生は,3年次演習と並行して,前期金3限(予定)の「情報処理技法(Webでの情報表現)」,前期火曜3限(予定)の「コミュニケーション特論(情報)A」,後期金曜3限(予定)の「コミュニケーション特論(情報)B」も受講してください.これらの授業で学んだことを3,4年次演習でも使います.
1.2 ゼミ合宿
3年次の夏休みには,4年生と合同のゼミ合宿を行います.ゼミ合宿は4年生の卒論発表が中心ですが,グループワーク,バーベキュー,スイカ割り,花火などの遊びも満載です.
1.3 卒論への取り組み
3年次演習の後半頃から卒論のテーマを考えます.各自3つのアイデアを考えて発表し,全員でブレイン・ストーミングして,そのアイデア(発想)をふくらませていきます.4年生になったら関連研究を調べながら各アイデアを詳細化していき,卒論概要を完成させ,5月末に卒論題目を決定します.5月から7月にかけて予備調査や予備実験を行って,自分で立てた計画がうまくいくかどうかを確かめます.7月のUAI研究会で卒論紹介をしてもらい,他大学の先生方やユーザの方々からご意見やアイデアをもらいます.4年次夏のゼミ合宿では,卒論概要を発展させる形で卒論の前半を完成させ,具体的な研究手法(実験?,調査?,??)を検討します.8月から10月にかけて必要な実験や調査をして,9月に開催される情報デザインフォーラムや10月下旬に開催されるUAI研究会で卒論中間発表をします.11月下旬に卒論内部〆切を設けていて,提出された卒論を渡辺が添削します.添削を反映して提出版の卒論を完成させ,12月上旬に卒論提出になります.
2. 過去の卒論紹介
なべゼミのこれまでの卒論の概要を紹介します.毎年,卒論の一部を学会発表しています.
2.0 2016年度の卒論
- 音声を用いた歩行者ナビゲーション
- 歩きスマホをなくすために,音声でナビゲーションするために必要な要素を調べています.2015年度卒論の改良版です.
- 手書き文字入力の有効性
- スマホの手書き入力の性能が向上しているので,特に高齢者において手書き文字入力が有効なのではないかという仮設を立て,検証しています.
- 電子媒体を用いたスケジュール管理
- 紙のスケジュール帳とスケジュール管理アプリの長所と短所を調べ,アレンジしやすいアプリの有効性を調べています.
- ゴミを捨てたくなるゴミ箱のデザイン
- どのようなデザインならばゴミを捨てたくなるのか. 今回はゲームに注目しました.
- LINEスタンプの適切な代替表現
- 視覚障害者はLINEスタンプを利用できません. では,どのような代替表現ならば視覚障害者も晴眼者と同じようにLINEスタンプを利用できるのかを調べています.2014年度卒論の発展版です.
2.1 2015年度の卒論
- 初心者に適したレシピ提示
- タブレットが普及した現代社会で初心者が料理をつくる際,どのようなレシピサイトが使いやすいのでしょうか.本研究では,理解度が高まり満足感が得られるレシピの提示方法として音声ガイドと動画に注目し,実際に料理を作ってもらう実験もして,どの方法が効果があるのかを確かめました.沖縄で開催された電子情報通信学会で発表しました.
- 音声を用いた歩行者ナビゲーション
- 晴眼の歩行者を対象にした研究です.歩きながらスマホを見るのは危険なので,音声だけでナビゲーションをしたいと考えました.考案した音声案内を元に被験者に街を歩いてもらい,提案手法の有効性を確かめました.
- ユーザのニーズに合わせた情報検索システムの有効性-車いすユーザの外出時におけるバリアの解消を目的とした飲食店検索システム
- 車いすユーザのニーズに注目しました.彼/彼女たちが外出する際,一番の問題になるのは目的地の飲食店などが利用できるかどうかだということが調査の結果わかりました.そこで,吉祥寺の飲食店を実施調査し,ユーザのニーズに応じて目的にあった飲食店を検索できるシステムを構築し,その有効性を評価しました.電子情報通信学会で発表しました.
- ウェブサイトの高級感とユーザビリティ
- 高級感を感じる(ブランドの)Webサイトとそのサイトの使いやすさ(ユーザビリティ)にはどのような関係があるのでしょうか.幾つかの業界から代表的なサイトを取り上げ,それぞれの高級感とユーザビリティを測定しました.その結果から,高級感とユーザビリティが両立するサイトが備えるべき要素を探り出しました.
- タッチパネルに適したリンクの操作
- マウスが使えないタッチパッドは使いにくくないですか.特にフラットデザイン全盛の今,どれがリンクやボタンでどれは単なる画像かわからなくて困ったことはありませんか.この研究はこの問題点を解決するために新しい操作方法を考案しました.3週間に渡る被験者実験を実施して,提案手法が有効であることを確かめました.INTERACTION2016で発表しました.
- 電子雑誌の効率的な内容把握
- 紙の雑誌と電子雑誌を比較した場合,どちらが使いやすいですか.電子雑誌をもっと使いやすくするにはどうすればよいのでしょうか.この研究は電子雑誌ならではの機能を考え,それを実装した電子雑誌の有効性を被験者実験で確かめました.
- 電子書籍のユーザビリティ向上
- 電子書籍も紙の書籍のようにパラパラ読みしたくないですか.購入する前に紙の書籍を立ち読みするように電子書籍を立ち読みしたくないですか.この研究は,電子書籍を購入する前の立ち読み機能を幾つか提案し,その有効性を被験者実験で確かめました.
2.2 2014年度の卒論
- 合成音声による解説付き映画ガイドの比較評価
- 福祉情報工学研究会で学会発表した研究です.視覚障害者が映画を鑑賞する際に音声ガイドというサービスがあります.人間がガイドするのは時間もかかりますしナレータが必要です.そこで合成音声による音声ガイドを作成すれば良いのではないかと考え,実際に音声ガイドを作成して被験者実験をして有効性を確かめました.
- ユーザーのニーズに合わせた情報検索システムの有効性-女子大生を対象とした新宿駅周辺トイレ情報における検索方法の研究
- インターラクション2015で発表した研究です.女子大生のトイレ利用は用をたすことだけが目的ではないですよね.お化粧,ライブの着替えなど多用な目的があると思います.そこで実施に新宿駅付近のトイレ100件余を調査し,目的にあったトイレを瞬時に検索できるシステム"BelleLavano"を制作しました.BelleLavanoは一般公開しています.
- LINEスタンプのアクセシビリティ向上-LINEスタンプを言語化した音声と効果音化した音声の比較
- LINEではスタンプを頻繁に用います.しかし視覚障害者はスタンプを利用することが出来ません.そこでいろいろなスタンプにどのような代替情報を付与すれば各スタンプの意味を的確に示すことができるのかを調べ,被験者実験を行いました.
- 合成音声を用いた文書理解の評価 -音声読み上げにおける強調表現の効果
- 紙の文章ならば太文字や赤色で示される強調表現を音声ではどう表現するのが良いのでしょうか.大きな声? 太い声? ピーと音を入れる? この実験ではどのような音声表現が協調を示すのかを被験者実験によって確かめました.
- フラットデザインを用いたウェブデザインのユーザビリティ-ピクセル立体によるウェブサイトのユーザビリティ
- インターラクション2015で発表した研究です.フラットデザインの要素は操作対象であることをsignifyしないので,どれがリンクでどれがボタンでどれは単なる画像や文字なのかがわかりません.そこでタップできる要素の背景画像のデザインを工夫することを考えました.被験者実験を行った結果,提案手法の有効性が確かめられました.
- スマートフォンにおけるアイズフリーな片手文字入力システムの研究
- スマートフォンで画面を見ずに文字入力する方法に注目した研究です.すでに学会発表されていた手法に注目し,それを改善することで使いやすさを向上させることを試みました.被験者実験の結果,有効性が認められました.
- バスアプリの使いやすさ評価
- スマホのバスアプリはいろいろありますが,どれも不十分なところがあります.そこで既存のアプリを調査するなどの方法で,バスアプリが備えるべき特徴を調べました.
- スマートフォン用アプリにおけるユーザビリティとアクセシビリティの評価-Webアプリとネイティブアプリの比較
- スマートフォンのWebアプリとネイティブアプリの違いを調べました.
2.3 2010年度から2013年度の卒論
Resarchmapで公開しています:
2.4 2009年度の卒論
- ライブイベントの情報保障 -初心者によるパソコン要約筆記-
- 聴覚障害者が授業やセミナーや会議に参加するとき,手話や要約筆記などによって,音声情報を保障する必要がある.この卒論は,社内会議のように,専門の手話通訳や要約筆記者を雇うことが出来ないような場面を想定して,同僚などがパソコンを使って要約筆記をする場面に注目した.その結果,会議で話される言葉を2倍に圧縮しないとパソコンに打ち込んで文字化できないことがわかった.
- 携帯電話用サイトのアクセシビリティとユーザビリティ
- 携帯電話用に制作された都道府県の携帯サイトのユーザビリティとアクセシビリティを調査
- スクリーンリーダを用いたWebアクセシビリティ評価 -NVDA操作ガイドの制作と,Web制作者によるアクセシビリティ評価実験-
- オープンソースで公開されているスクリーンリーダNVDA日本語版を用いてWeb制作者がJIS X 8341-3:2010に対応したサイトを制作できるかを調査.スクリーンリーダで評価可能と思われるJISの達成基準を取り上げ,本物のWeb製作者にNVDAを使ったアクセシビリティ評価を依頼した.卒論用に制作した「NVDA日本語版操作ガイド」はウェブで一般公開されている.力作の卒論です.
- 高等学校における情報教育 -普通教科「情報」の授業の現状-
- 学校や年度によって情報の授業で学習した内容が異なるかどうかを調べるために,本学科の1年生と3年生を対象にした質問紙調査を行った.
- ハザードマップのカラーユニバーサルデザイン
- 地震被害などを示すハザードマップが色覚障害者にも使えることが大事である.そこで,色覚障害者にも利用できて危険度もわかりやすいハザードマップの色の使い方を調べた.
- 有効な音声CAPTCHA -削除法と混合法の比較-
- 東大の西本さんとの共同研究.ソフトが破りにくく人間には聞きやすい音声CAPTCHAの手法として削除法を提案し,被験者実験でその有効性を調べた.
2.5 2008年度の卒論
- 色弱者が感じるカラーユニバーサルデザイン
- 大学のWebサイトの前景色と背景色の組み合わせに注目
- 動的なWebのアクセシビリティ
- Ajaxを始めとする動的なWebサイトの実例を集め,WAI-ARIAがどのように適用できるかを検証
- 中学生とインターネット
- 中学生の生活をインターネットがどうenhanceできるかを検討
- 高齢者にとって使いやすいWeb
- 一枚のページに全情報が書いてあるサイトと,情報の構造に沿って複数のページに別れているサイトのどちらが使いやすいかを,高齢者22名と女子大学生22名対象に実験を行った.
- ウェブのユーザ体験
- 写真やイラストがWebの楽しさに及ぼす影響を調べた
- ウェブの構造
- レイアウトテーブルで情報を詰め込んだサイトと,div要素でブロックに区切り,関連する情報をリスト要素でマークアップしたサイトを視覚障害者を被験者にして比較
- 視覚障害用早口合成音声の研究
- 昨年度の卒論の続編.単語親密度との関係等を研究
- 有効な音声CAPTCHA
- 音声CAPTCHAの新しい手法の有効性などを研究
- わかりやすい音声ガイド
- どのような音声ガイドがわかりやすいかを研究
2.6 2007年度の卒論
代表的なものを紹介する.
- 映画の音声ガイド-初心者用ライブ音声ガイドマニュアルの制作と評価-
- 視覚障碍者は映画を見る際、映像が見えないことや字幕を読めないことが障碍となり、映画を心から楽しむことが出来ない。視覚障碍者が映画を楽しむために、登場人物の特徴や情景など目で見る情報を言葉で説明することを「音声ガイド」という。しかし、上映中の映画を解説するライブの音声ガイドは、初心者には敬遠され視覚障碍者の需要に対し、ガイド者の数が少ない。そこで、「ライブ音声ガイドのマニュアル」があれば、ライブ音声ガイドに挑戦しやすくなるのではないかと考え、「初心者のためのライブ音声ガイドマニュアル」を制作した。本研究の目的は、インタビューや実験を基に、「ライブ音声ガイドマニュアル」を作ること。さらに、そのマニュアルの有効性を客観的に確かめることである。
- JavaScriptを利用した動的なWebのアクセシビリティ-Googleのケーススタディ-
- 最近はやりのAjax(Google MapやGMailのような,アプリケーションのように使えるウェブサイト)のアクセシビリティに取り組んだ研究.Google DocumentとiGoogleに注目し,音声ブラウザを利用するユーザにとってどのような問題があるのかを調べ,重要なポイントを明らかにした.
- パワーポイントのカラーユニバーサルデザイン
- 色覚障害があるユーザにも使える「かわいい」パワーポイントのデザインを研究.
- ウェブのユーザ体験-映画モバイルサイトのユーザビリティと楽しさ-
- 昨年度に続く卒論.携帯用のサイトに注目し,ユーザビリティと楽しさの関係を明らかにした.
2.7 2006年度の卒論
- 画像を音声でわかりやすく伝える工夫
- 視覚障害者,あるいは運転中や真っ暗闇にいる晴眼者に,どのような点に注意して画像を説明するのがわかりやすいのかを調べる研究.いろいろな写真を用意し,それにいろいろな説明を付け,各画像の説明毎に,こちらが用意した質問に答えてもらうことで,「わかりやすさ」を構成する要因を重回帰分析により調べた.
- ウェブサイト作成ツールのアクセシビリティ機能
- 昨年の卒論に続く研究.今年は,一般向けに普及しているオーサリングツール,IBMのホームページ・ビルダーに焦点を当て,総務省の「公共サイト運用モデル」に沿ったアクセシブルなWebサイトを構築する方法を検討し,IBMのホームページ・ビルダー開発グループに改善案を提案した.
- 視覚障害者用早口合成音声の研究
- 昨年の卒論に続く研究.今年は高齢者に焦点を当て,高齢者でも慣れは生じるのか,どの程度の早口まで聞き取れるのか,女子大生と差があるのか,などを調べた.高齢者13名に週1回4週連続大学に来てもらって実験した.
- ウェブのユーザ体験
- 楽しいウェブとはどういうウェブかに興味を持った研究.Flashや写真があるウェブとそうでないウェブで,ユーザビリティと利用者の楽しさの関連や,サイト毎の差とその要因を被験者による評価で調べ,Flashが楽しさに関連すること,しかしFlashを使ったサイトのユーザビリティは高くないことを明らかにした.
- ウェブの構造化
- 見出し要素などで正しく構造化したウェブは,晴眼者のユーザビリティや視覚障害者のアクセシビリティを向上させるかどうかを客観的に調べた研究.自分でテスト用のウェブサイトを用意して,いろいろな工夫を重ねながら実験.この卒論を発展させたものを渡辺が国際会議で発表し,最優秀論文賞をとりました.
- 情報機器と人間の音声対話(2名のグループ研究)
- 昨年の卒論に続く研究.視覚障害者と対面朗読者の対話を分析し,それを元にXHTML版のお弁当注文システムをPHPとPostgreSQLで作成し,視覚障害者による評価実験を行った.音声対話と比較したWebページ遷移システムの有利さや,候補や絞り込みなどの特徴の有効性が分かった.
- ウェブサイトのユーザビリティ
- 昨年度の卒論に続いて学科サイトのユーザビリティを調べ,改善案を出した.
- 地方自治体ウェブサイトの現状
- 自治体などの公共サイトはウェブコンテンツ・アクセシビリティガイドラインJIS X 8341-3に準拠している必要がある.本当に準拠しているのか,JISのどの部分が準拠していないのか,自治体の規模による差はあるかなどを,テストツールで比較した.
2.8 2005年度の卒論
- 高等教育におけるeラーニングの現状と今後の展開
- コミュニケーション学科の「情報通信ネットワーク1,2」は,シスコ・ネットワーキングアカデミーというeラーニングシステムを使っています.この卒論は,高等教育におけるeラーニングの国内外の現状を調べ,シスコ・ネットワーキングアカデミーの受講者の調査を元に,eラーニングの普及に必要な要素を調べました.
- 視覚障害者用早口合成音声の研究
- 耳で聞く方が目で読むより時間がかかるので,早口で音声合成してくれないとコンピュータの音声利用に時間がかかってしまいます.そこで渡辺研究室では,早口でも聞き取りやすい合成音声に関して科研費の共同プロジェクトを行っています.この卒論は,この共同研究の一部として,早口でも慣れれば聞き取れるようになるのかについて,被験者実験を元に調べました.
- コンピュータと視覚障害者の音声対話に向けて
- 今は,コンピュータの前に座ってキーボードを叩き,画面に表示される情報を目で読み取らなければコンピュータを利用できません.しかし,コンピュータと人間が音声対話できるようになれば,人間がコンピュータの前に座る必要はなくなります.そこで,渡辺研究室では,視覚障害者とコンピュータの音声対話に焦点を当てた共同研究を科研費で実施しています.この卒論は,対面朗読者(視覚障害者に本を読み上げるサービスなどをする専門家)と視覚障害者が,ケータリングメニューを元に食事を注文する際の対話を分析し,音声対話に必要な構造と要件を調べました.
- 日本におけるウェブ・ユーザエージェントの問題点
- 視覚障害者用のウェブ音声化ソフト(ユーザ・エージェント)の機能はまちまちです.しかし,ユーザ・エージェントの機能がそろっていないと,ウェブを作る側はどれに合わせればよいかわからないので困ってしまいます.そこで渡辺研究室では,「日本の視覚障害者用ユーザ・エージェントの機能調査」を,ウェブ・アクセシビリティの専門家たちと共同研究しました.この卒論はその一部で,視覚障害者の間でもっともよく使われているIBMのホームページ・リーダの機能を詳細に調べて,問題点と今後の方向性を提言しました.
- コミュニケーション学科ウェブサイトのユーザビリティ
- 学科サイト・リニューアルプロジェクトの続きを卒論にまとめた研究です.新旧学科サイトのユーザビリティ・テストを実施し,どこが改善されたかとか,どんな問題が残っているかを調査しました.この卒論の成果は,学科サイトの改善に活用されます.
- 音声によるわかりやすい情報伝達
- ラジオとテレビのスポーツ実況中継を競馬,サッカー,野球で比較し,画面が見えないラジオのアナウンサーがどのような工夫をしているかを調査した研究です.
- ウェブサイト作成ツールのアクセシビリティ機能
- 「ユニバーサル・ウェブ -誰もが使いやすいWebサイトの構築-」を読めばわかると思いますが,エディタを使って手でウェブページを作るのは労力がかかるだけでなく,標準仕様に沿わない間違ったウェブページを作ってしまいがちです.しかし,オーサリングツール(ウェブサイト作成ツール)の助けを借りれば,そのような問題はなくなります.また,オーサリングツールがアクセシビリティに優れたウェブページを作ってくれるなら,世の中のウェブページはアクセシビリティに配慮した物になるでしょう.この卒業研究は,オーサリングツールのアクセシビリティ(支援)機能を詳細に調べた後,さらに,オーサリングツールのユーザはその機能を使っているのか,使わない理由,どういう機能がわかりやすいか,について,インタビュー調査しました.
3. Q&A
3.1 よくある質問とその答え
- コンピュータが得意でないと渡辺ゼミでやっていけないのか?
- そういうことはありません.それに,今は得意でなくても,渡辺ゼミにいる間に得意になると思います.ただし,コンピュータが好きなほうが卒論の選択肢が広くなるし,より深く卒論のテーマを追えると思います.つまり,コンピュータが得意なことは必要条件ではありませんが,得意なことがプラスになります.実際,今のゼミ生の中には,情報系の授業を取っていなかった学生も多数いますが,全く遜色ありません.
なお,卒論では,実験に使うシステムのプログラミングや音声合成の技術的なことは私や私の共同研究者が担当し,学生の皆さんには,その技術をどう使うかや,使い勝手や有効性の評価をしてもらうという役割分担ができると思います.皆さんは,おもしろいアイデアを出し(デザインし),「技術をどう使うか」という観点で卒論に取り組んでくださればよいと思います. - 渡辺ゼミは難しいことをやっていそうなので,私には無理ではないか.
- 4年生があちこちで研究発表しているのを見ると,なんて難しいことをやっているのだろうと思うかも知れません.でも彼女たちも2年前までは皆さん同様に難しいことは何も知らない学生でした.やる気を持って卒論に取り組んだ結果,ここまで来たのです.皆さんも,是非,後に続いてください.
- 広告など他の分野をやりたくてコミュニケーション学科に入ったけど渡辺ゼミにも興味がある.
- 上記の卒論テーマを見ればわかるように,広告を題材にしていても,ウェブやモバイルや音声といったテーマの卒論を考えることが可能です.むしろ,そういうテーマを渡辺ゼミ的にどう調理するかがおもしろいところだと思います.
- 絶対にXXXをしたい.
- えーと,今考えているテーマが卒論のテーマになる可能性は低いと思います.皆さんは未だ背景知識が乏しいですから,3年生でいろいろ経験する間に,卒論のテーマはかなり変わるだろうと思います.
- いつごろ卒論のテーマを決めるのか?
- 3年生の間は,渡辺ゼミに関連することをいろいろ経験して欲しいと思っています.3年次終わりの12月頃から,卒論のテーマを考え始めます.